ENo.0060　Lupth

整備は早々に終わり、パーツの交換はほぼなし。先週と違って落ち着いてるというよりは時間を持て余しているような状態だった。

ソファの背もたれに両肘を乗せ大股を開いて行儀悪く腰掛ける彼女の足元に素早い足さばきで犬が近づいていく。


「ひゃん」

「ん？…ああ、先週は忙しかっただろう。その疲れが残ってるのかどうにも体が重くて動く気にならない」


心なしかいつもより頭が痛むから余計にな、と険しさ二割増しの顔でこめかみに指を添えてため息を吐く。


「ひゃん、あぅぅん！」

「そこまで言わなくてもよくないか。確かにあの時のほうが歳は食っていたが……十くらい上だったか。しかし鍛え方も常日頃の運動量も違ったんだ、今のほうが体力がなくても仕方がないだろう？」

「うﾞー、がう！」


彼女の言葉には賛同しかねるとでも言いたげに犬は唸りながら首を振り、活を入れるように荒々しく吠える。
見た目はモフモフの毛玉なので全く迫力はないが、声だけは立派に成犬なのでギャップが激しい。


「だから疲れていると……それに体調が良い日は動いてるだろう。勘弁してくれ」


納得いかないと犬が唸るが彼女が片手でわしゃわしゃとふわふわな頭を撫で回すとあっさりと機嫌が良くなり舌をぺろりと出してひゅーんと甘えた声を出す。

彼女は犬にバレないようこっそりとため息を吐き、このままごまかしてしまおうと改めて両手を伸ばし、膝の間に抱えあげてから撫で回す。
数分と経たず、腹を出してご満悦な犬の姿が見られることだろう。

1LDKの居住空間と簡易ガレージを内包した移動型拠点。
少々角ばったドーム型をしている。



全ての窓や出入り口には過剰なロックが施されているようだ。