ENo.0060　Lupth

殆どのパーツを交換するという大仕事を終え、汗や仕事で汚れたのもそのままに煙草を吹かす彼女はヤンキー座りで真っ白な犬と対面していた。


「ばぅ！　ぐるる……」

「そこまで全力で却下しなくてもいいと思うんだが」


彼女と犬はいい加減機体名を決めようと話し合っているところだった。
どうでもいいと考える気すらなかった彼女に対し、犬が何でもいいから付けろと吠えたのが始まりだ。

何でもいいと言ったわりに先程からダメ出しばかりが続いているので一向に終りが見えない。


「狼、今日はここまでにしてくれないか。いい加減休みたい」

「ゔーー…………きゅんっ」


今回は犬が折れたらしい。
ありがとう、と礼を言いながら彼女が立ち上がり歩き出すと犬もその後に続く。


「ひゃんひゃん」

「……ああ、わかってる。なかったことにはしない。珍しいお前の要望だからな」


むふんっと満足気に鼻息を荒くしてしゃかしゃかと先を行く犬に合わせ彼女も少し歩幅を広くして進みガレージから去っていった。

1LDKの居住空間と簡易ガレージを内包した移動型拠点。
少々角ばったドーム型をしている。



全ての窓や出入り口には過剰なロックが施されているようだ。