ENo.0146　フレースヴェルカ

忘れてはならない、その世界を。

失ってはならない、その日常を。

今を生きる貴方の為に。

未来へ生きる私の為に。


一通り調べて、それから休憩して今は整理をしている。
見上げているのは、ウォーハイドラ。わたしが乗る、ハイドラ。
わたしが一番扱っているのだけど。それでも、まだわからないことが多かった。
いまだにどういう仕組みで動いているかもよくわかっていない。
武装の換装だって、わたしはあまり関与して無い。
なら、少しでも知るべきだろうと思った。思ったんだ。


「……お腹すいた」


結局はお腹すいたになるんだけど。
なんだろう。ここのところ戻ってくると大体お腹すいてる気がする。
少し前はそうでも無かったんだけど、うーん。なんでだろう。

……そうだ。あそこに戻ればカレーを用意してもらってるし、それを食べよう。
いつも出る前にちょっと準備してるみたいだし。手伝ったことないけど。
手伝おうとしたら「座ってろ」みたいなニュアンスされたし。
まぁ、つまりはそれで。


「あ、ちょうどいいところに居た」
「整備兵のあんちゃんだ」
「名前覚えてくれよ」


でも名前聞いた事無い。


「どしたのさ」
「君のハイドラ、何か変な攻撃もらった？」
「うん？　いや、たぶんいろいろもらってるけど？」


いろいろもらってはいる。最近は減ったけど。


「いや、その時に電子系…というか、雷撃系の武装での攻撃は？」
「ないけど……」
「おかしいなぁ。じゃあなんだろうあの焦げた痕」
「焦げた痕？　炎上痕じゃなくて？」
「あんな綺麗な燃え方、炎上じゃないねぇ」


なんだろう、それ。


「うーん。もう綺麗にしちゃった？」
「部品は取り換えたからなぁ」
「そっか。あんがと」


…………。
もしかして、まだ残ってないかな。部品置き場に。ちょっと探してみよう。
わかんないけど、何か有るのかもしれないから。

壊れてしまった、もはや時代遅れ、彼氏にフラれた腹いせ。
あれこれの理由で積もったジャンク品の山の中。
打ち捨てられたようで、実はとても手入れの行き届いた三段櫂船型ハイドラが……無い。何処かへ消えてしまったかのようだ。
ある一人の幽霊が、それについて聞かれるとニヤリと笑う。




「どこだと思う？メテルカならわかんじゃねえかな。」