ENo.0390　ピクセラ

「いや～、まさかタッドくんがボクのことずっと女の子だと思ってたなんてな～。
ブリキ屋さんもレオくんもわかってたのに、僚機のタッドくんがな～」

ここで手を目元に持っていって、大げさに悲しんでる素振りをしてみせる。タッドくんは全然こっち見てくれないけど。

タッドくんがボクを女だと思っていたことが、つい先日判明した。
そう、つい先日だ。タッドくんとは、ボクがハイドラライダーになってから僚機を組んで、もう2ヶ月以上経つっていうのに！
まさかずっとそんな勘違いをされていたとは思わなくて、ボクの方がびっくりしてしまった。

軍人ってそんな観察力でやっていけるの？
あ、軍服を着てるだけで、もしかしたら軍人でもなんでもないのかもしれないけど。
……そういえばボクもタッドくんのこと全然知らないな。まぁいいや、とりあえず棚に上げておくことにする。

さて、タッドくんはさっきからずっとこちらに背を向けて、タブレットを操作している。多分アセンブルでも考えてるんじゃないかな。

とはいえ、なんとなく気まずそうな雰囲気は背中越しでも伝わってくる。

「……そんな格好をしているから、」

そういうこと言っちゃうんだ～。
正直、こいつ性別もわかんないほどボクに興味がなかったのか～と思ってボクは若干傷ついたのだ。
その上に言い訳なんかされると、ムカついちゃうなー？

「しょうがないって？
ふーん……」

こうなったら徹底的にいじってやる。

「タッドくんって童貞？」
「どうしてそういう話になるんだ」

あ、やっとこっち見た。

「だって、女の裸見たことあったら、ボクが女じゃないってわかりそうなもんじゃん？だから思っただけ。
やだな～そんな反応、マジ童貞みたいだぞっ☆」

「……」

あ、この沈黙は。もしかしてマジのやつか？
マジで？嘘だろ？

……追い出された。
追い出すことなくない！？

まぁいいや。それくらい、タッドくんを動揺させられたってことなんだろう。

せいぜい気まずい思いをしたらいいんだ。
そんでボクをもっと気にかけろ、バーカ。

禁忌戦争から五年。
世界は霧の呪縛から解放され、新たに黄金の楔を撃たれていた。

持つ者は持たざる者を貪り食い、世界は荒廃していた。
だがーー人々の愛する""正義""は、失われていなかった！！