ENo.0074　水槽に沈む首

──ゆっくりと目蓋を開ける。
この水槽の中では、青白い光が目覚めの朝日の代わりだった。
おの威光には不似合いな不吉さだが、構わない。意識が途絶える直前──崩れる銀、モニターを一面に満たす電撃が、今も尚目に焼き付いている。
死を覚悟していた。それが、こうして目覚められるだけ随分幸運というものだ。

しかし安堵の息を吐いている暇はない。
『起きた』ということは『開戦』ということでもある。
己を生かしている者の思惑によって、自身の時間は戦いのみに向かわされる。脳内で詩を作ることも出来ん。酷よなあ。

だが、それでいい。
水槽に映る無機質な情報の一つ。『コロッセオランキング』──序列は3。そこに載っている名を見て、口端を釣り上げた。
純粋に楽しいのだ。血肉の檻の中で、身を擦り減らす競争に身を投じることが。

機体が脈動する。銀の輝きがモニターに満ちる。
第31ブロック……次の戦場も随分と猛者揃いだ。序列の1、4、8が敵になるか。よかろう！蹴落とすにはいい機会だ──俺に足はないが！

今日も高笑いを響かせよう。王の存在を刻み付けてやろう！
そして終ぞ序列1の座を！俺の物にしてやるのだ！フハハ、フッハハハハハハハハハハハ───