ENo.0406　ファイブカード

　
今日もコロッセオの中継を見ていた。
今日は送られてきた、“闘士”への報酬が記載された募集要項を読みながら。

あの場で戦えば通常の報酬に上乗せされて、結構な額のファイトマネーが得られるのだとか。
バブルのような有様だと思わなくもなかった。

とはいえ我が身を振り返ってみれば、そうした多額の報酬が必要ないとは決して言えなかった。
市場で良質なパーツを買い漁れば、強力な火器で弾薬をばら撒けば、うっかり機体が大きな損傷を被れば……
そんなことを繰り返せば今ある貯えはあっけなく尽きるし、そうならないために毎週仕事をしているのだった。
より上手く仕事をこなすために、仕事をしている。生き延びるために。そうする道しかなかったから。



それじゃあお前はコロッセオに行く心積もりなんだな？

　　　───頭のどこかで声が響く。

お前はコロッセオの戦いを見たのか？
その中で生き延びられる自信があるのか？
求められる覚悟と実力と意思とを備えているのか？
自分は死なないと思っているのか？



───……

コロッセオの中継を見ている。
追える動きも追えない動きも、見通せる策も不可解な軌跡も、どれも乱れて入り混じっている。
戦況は霧に覆われたように窺えもしなかった。戦いがすべて終わって晴れるまで。

それならいつもと変わらないと、そう思った。

かつての乗り手たちの遺したもの。

今は大型のレーザースコープとしてここに在る。
常より射撃の訓練、あるいは実戦に用いる者がいる。