ENo.0107　戦闘人形『カラミティ』

「転生の時だ」

出撃前のガレージ、我はイビルフォースに告げた



コロッセオから帰ってきたイビルフォースの姿は
見るも無残な――まさしく、満身創痍の状態であった
双翼は砕け、脚は欠け、武器を握る手は機能していない

人間であればこの状態は、戦線からの引退を余儀なくされるだろう



ガレージに居座り、その巨体を休めているイビルフォースは沈黙を保っている
閉ざされた瞳の奥に、何を映しているだろうか



我は自分の修復を終えた後、彼女へと歩み寄り、先の言葉を告げる

「我々は型に収まるのを辞めよう
　貴様も、我も、進化するべきだ」

地上の民が見せた、進化の可能性
それは知性を持った有機体の特権、変化し続ける者の定め

一方、我々は兵器だ
古く、無機で、思考は一定以上の変化を齎さない
進化とは程遠い――



――果たして、そうだろうか？



「我々は変われるはずだ
　たとえ兵器だろうと、人形だろうと――我は、意思を持っている
　貴様もきっとそうだ、閉ざされた瞳の奥で、貴様は何かを抱いている

　――我にはわかる、貴様と繋がり、肉体を共有した仲だ」

戦闘時には、彼女の腹部に乗り込み、線を繋ぎ、神経を共有して戦っている
即ち、我の身体とイビルフォースの身体は、闘争の度に同期している

その最中に、時折、彼女の意思が線を通じて我の思考に流れ込むことがある
それは最近になってのことだが――



イビルフォースと同様の、古代天界兵器は皆、目隠しを付けている
目を持たぬことで、導かれる存在――即ち、兵器や道具ということを示すからだ
それは兵器としての枠から外れることのないように、という主神の意図だ

つまり――堕ちた我々には、もう関係ない
いくら進化しようが、我々を咎める者はもういない



「イビルフォース――貴様は、何を望む？」

コクピットに乗り込む
繋がった線から流れ込む意思から、次回の兵装を探り始めた――

闘争の度、我は此処に訪れた――

此処は107号室、我が陣地。
我の回復から昇華まで、全てを見届けた部屋だ。