ENo.0066　全くダメなウォーハイドラ乗りの男

『うーーん』。
『腕がないと鈍る気がする、というか当たらねえ』。
『当たり前なンだよなァ？』。

　
　“残像領域”の片隅にある寂れた酒場。
　飲んだくれが壁にシミを作りながら寝込んでいる。
　あるいは店名の通り、掲げられたダーツボードに投じ続ける客もいる。
　あるいは三文にも満たない噂を流す客がいる。

　別にどうということのない、単なるクソッタレどもの休憩場だ。
　その気になれば誰かを歓迎するし、誰にも干渉しない空気が流れている。
　時たましゃがれ声や、低くうなだれたような声の雑談が聴こえる。

『歴史の編纂者――？』。
『えーと、ヒストリアン？　ウン、多分そンな感じ――』。

　この喧騒の最中でも、努めて額を突き合わせ小声で何かを語らう男ども。
　むさ苦しく、見ようによっては茶化される構図だが。
　誰も気にする者は居ない。
　
『あ、それから。例のヤツ手配してくれた？』。
『おお、あんま反応はよくなかったが、許諾（アポ）はとってきたぜ』。
『一回こっきりかもしれねーが、面白そうだねえ』。

　珍しいことに、男は僚機（バディ）を所望していた。
　そして情報屋であり様々な方面にコネを持っていた男は、以前取引をしたある棺桶乗りと話をつけてきたという。
　“無反応だがOKだった”、という謎の話であった。