ENo.0349　ラキア・パラミダス

フレイド・コークスに語ったように、ラキアは自身の命を狙う何者かがいることに関してほとんど確信に近い疑念を抱いていた。
１８年の短い人生の中で、彼女が九死に一生を得た経験は残像領域の戦争以外では４回あった。

母と一緒に乗っていた車両の事故、弟と見物していた騎士トーナメントで巻き込まれたＷＨの暴走、そして騎士として参加した部隊が戦場で壊滅の憂き目にあうこと２度。
いずれも、ラキアだけが運よく生き残った。

不幸な事故が重なっただけなのだと、ラキアも最初は思っていた。
戦場に出れば死にそうな目にあうことだって当然あるだろう。

けれど……。


全滅したラキアの隊を率いていた男は慎重な用兵に定評があった。
それがなぜあのような無茶な作戦行動を採用したのだろうか？
迎撃任務の際、ラキアたちの位置がまるで敵に筒抜けのようだったのは単なる作戦ミスによるものだったのか？

何者かの陰謀によって仕組まれていたのではないか、とラキアは考えた。
考えてみたものの、ラキア自身それを信じていたわけではない。何故なら、そこまでして狙われる動機がなにも思いつかなかったから。

証拠もなかった。
……むしろ、なさすぎた。回収された機体の、戦闘ログすら残っていなかったのだから。
通信士に直接会って当時の戦場の状況を聞きだそうとしたこともあるが、なにも覚えていない、知らないと言うばかりで取り付く島もなかった。
口止めをされていたのか、あるいは、今思うと、メフィルクライアの言っていた記憶洗浄というものを受けていたのかもしれない。

ラキアの疑いは、ほとんど確信に変わった。
そして、そんな真似ができるとしたら、背後で糸を引いている相手はかなり大きな力を持った存在だろう。

だが、何のために？
フレイド・コークスに言ったように、政治的な理由も考えにくかったし、怨恨にしては手が込み過ぎている。


ひとつだけわかるのは、全てが仕組まれていたのだとしたら、母や弟はラキアの巻き添えで殺されたということだ。

ラキアは、家族から離れてひとり孤立する道を選んだ。
その判断が正しかったのかどうか、ラキアにはわからなかった。

鉄の騎兵を駆る騎士のためのユニオン。
とある王国が買い占めた土地に建つ巨大な要塞『エクゼター』を本拠地に活動をしている。

ユニオンメンバーになるには、騎士としての十分な名声、もしくは一等以上の位をもった騎士による推薦が必要。
シンボルマークは、青地に銀のガントレット