ENo.0647　有明

初めてだった。

今までに守れなかったことなどなかった。
だから今回もまた、いつも通りだと思ってた。

けれどもそうはいかなかった。
守ると決めた相手は、敵のバイオ兵器にあっさりと墜とされた。
普通のハイドラならまだしも、バイオ兵器だ。そんな話があるか？

【生存優先だったし良いじゃないか】

心の中で誰かが囁く。
馬鹿が。そういう問題じゃない。
生きていたから良かった、なんてのは負け犬の台詞だ。
そもそも、そういう状況になってしまった時点で僕の負けなんだ。

考える。守るための力を。
だが、一体これ以上何ができる？
現状で可能なことは、すべてやっている筈だ。
……いや、だからこそか。その慢心がいけないのだろうか？

「……はー……」

張り詰めていた緊張の糸が切れる。顔を片手で抑え、ぐたりと操縦棺の座席に項垂れる。
どれだけ考えても、分からないことはある。そういう時は、実戦で身に付ければいい。
なんだ、やっぱり今までと同じだ。いつの間にか、人知れず笑いがこみ上げていた。

まだまだ、“その時”まで時間はある。だったら、それまで探し続けるだけのこと。
「やってやるさ」と独り言ちる。身体を起こして立ち上がり、機体の整備に取り掛かる。
彼女からの通信が入ってきたのは、そんな時だった。

『九連砲塔、やってみない？』

太陽は此処に在り。