ENo.0276　ローデット・ダイス

「コロッセオって、もう行く予定ねえのか？」


遠回しにコロッセオに行きたい旨を告げると、バルトは大きな溜息をついた。
あれだけ金が入るなら個人的にも行ってみたいものだ。


「……ゴーグル。前つけてたアレ、まだ持ってるか？」

「ん、ああ、最近は直で乗ってるしあんま使わねえけど」

「あれつけろ。あれなら目が隠れる」


せいぜい、止められるか普通に了解もらえるかと思っていたが
まさかそんな言葉が返ってくると思っておらず思わず目を瞬かせた。


「……過保護かよ」

「なんとでも言いやがれ！」


苦笑してしまったが、そういった気遣いが嬉しくて素直に従うことにした。


コロッセオで戦う前日、相変わらず客は賑わっていた。
いっそ賭ける側に回るのもよかったな、と今更ながらに思いながらその日賭けたチケットをポケットに入れた。
情報収集がてら、その辺を散策していると下品な笑い声が聞こえた。

(あー、やだやだ。金持ちの道楽かよ……)

「それで、今日はどちらに賭けられますか？」
「こちらに賭けようかと」
「では私も」
「私も」
「おやおや、いいのですか。負けても責任は取れませんよ」
「ですが最近手に入れたんでしょう、手に入れてから負けなしと聞きますよ」
「おや、耳に入るのが早い。全く以ってその通りで良いものを手に入れた」
「落札の額も凄かったと聞いた、今日もお持ちで？」

そう言って金持ちの一人が見せた物に目を見開いた。
子供の眼だ、瞳孔が賽の形をした、はたから見たら変わった形の眼だと思うだろう。
罵声を浴びせたかった、ぶん殴りたかった。
それを何処で手に入れたか、もう片方の眼は何処か聞きたかった。
ふつふつと煮え滾る怒りを抑えて、深呼吸をしてその場を離れた。
飛び込むことは得策じゃない、あいつら殴って奪うこともできるが
欲しいものは奪われた取り返しのつかないものではない。
それにバルトに何も言わずに来た、勝手に行動しようもんなら絶対なにか言われる。
ただ、コロッセオにはこういう輩がいるってことだけ今は胸に留めておこう。
買っていたチケットを破いて、今日は帰ることにした。


「……明日に備えるか」

とあるものを求める為の集まり場。
それが何であろうと構わない、情報収集の場でもある。


制御*5、ユニオン購入は適当