ENo.0206　モニカ・フランクリン

　通信で戦闘終了のアナウンスが入って、ああ、終わったんだって思った。
　武装化した宗教団体の制圧、だとか殲滅、だとか。色々任務の種類はあるけど、結局やることはいつも大差がない。
　目の前の敵を、吹っ飛ばして、打ちのめす、だけ。

「……はぁ……」

　操縦棺の中で膝を抱える。思いっ切り動き回って、自分の身体じゃないけどGに振り回されて、そんでもって精神力も使い果たして、疲れた、と思った。もう本当心の底から。汗もぐっしょりで気持ち悪くて、でもいつものことだ。こんなのは。
　疲れた。けど。生きてる。帰らなきゃ。帰ろう。
　機体はボロボロ。攻撃は、まともなものは一回も食らってなかった、はず。一瞬だけ機体を揺らした、自分のものではない、何か不思議な衝撃はあったけど、でも、致命に至るものではない。今の状態であれを食らったらそれでも瓦解するだろうなって、なんとなく分かるし、そもそも画面に表示された毒々しく赤いアラートを見ればそれだけで一目瞭然ってやつだった。あと一撃。それにすら耐えられないほどに自壊を繰り返した。
　ごめんね、とちょっとだけ思った。ヘリオトロープ。私の愛機。無茶苦茶をさせてしまった。

　死にたいわけがない。死にたくないわけがない、わけがない。
　命が惜しくないわけもない。全くそんな理由はない。
　もっと安全に。安全に暮らせる手段もそもそもあるはずだ。
　お兄ちゃん。お兄ちゃんを追いかけてきた。追いかけて、同じようにハイドラライダーになった。
　他に一人で生きられる道が見つからなかったから？　どうだろう。ハイドラライダーだって、本当は私がなれる理由はなかった。ライセンスの世話をしてくれる人が見つかって、その人がすごく親切で、それでなんとか潜り込めた。
　師匠で、それで、相棒になってくれる人が見つかった。お陰で色んなことを教えてもらえた。助けてもらった。こうして戦えるようになった。
　こうして戦えている。

　こうして。

　ボロボロになった操縦棺の隙間から戦場が見える。画面越しじゃない、自分で見る戦場。今はもう静まり返って、退却する自軍の機体だけが動いている。
　荒れ果てた戦場だった。帰らなきゃ。もう一度そう思った。
　帰らなきゃ。帰ろう。



　どこに？

ひとりでもユニオン。