ENo.0349　ラキア・パラミダス

空中要塞攻略にむけて準備していたある日、ラキアの専用端末に一通のメールが届いた。
ランストラ本国からだが、差出人はいつだったかのように姉ではなく、円卓議会の署名がある最重要確認扱いのメールだ。

内容は要約すると、『辺境にランストラ騎士の実力を知らしめるために、コロッセオに参加しろ』というものだった。
残像領域を中央とした場合、ランストラは辺境軍閥のひとつという扱いになるだろう。
けれど、ランストラ王国は公式の文書で自分たちのことを辺境と呼ぶことは絶対にない。我々が中央で、やつらが辺境なのだ、と。

２００機以上の騎士を擁する王国の矜持を端的に表現したそのような感覚は、ラキアもここにくるまでは当たり前のものと思っていたものだが、
ウォーハイドラの目覚ましい進歩、その技術を貪欲に取り入れてゆくハイドラ乗り達の戦いぶりにその当たり前は脆くも崩れ去った。
時代の先端は、この残像領域で作られていることは間違いない。

そして、そんな凄まじい変化に対応しながら腕を磨いているハイドラライダー同士でしのぎを削るコロッセオの戦いは、騎士として一流とは言い難いラキアには正直荷が重かった。
けれど、国の最高意思決定機関である円卓議会の決定を拒否する権利はラキアにはない。

戦果報告は定期的に送っているので、ラキアがこの戦争で苦戦していることは把握しているだろう。
辺境の傭兵ごときに遅れを取るのはランストラ騎士としては好ましいことではない。
テコ入れ……というわけではないだろうが、コロッセオに参加しろ、という命令自体は理解できなくもない。

けれど、要塞攻略を控えたこの時期に。タイミングに、なんらかの意図を感じなくもなかったが……考えすぎだろうか？


この残像領域に来て、知り合いになったライダーも何人かいる。
ラキアから話しかけることはなかったが、戦場で共に戦ったり、取り引きなどで話すようになったりして、それからメールなどでコンタクトを取っている。
自らが置かれた状況に巻き込むことを避けるため、出来るだけ人と離れるようにしていたラキアだったが、彼らとのやり取りは過酷な戦場の中で一種のオアシスの役割を果たしていると言ってもいいだろう。

コロッセオに参加すれば、もしかしたら、彼らと命のやり取りをすることになるかもしれない。
そう考えると、ラキアの気持ちは沈んだ。
フレイド・コークスをそれに付き合わせるのもラキアは好まなかった。


要塞攻略も、かなり厳しいものとなるだろう……果たしてこれから先の戦いを自分に乗り切ることができるのだろうか。
でも、やるしかない。

鉄の騎兵を駆る騎士のためのユニオン。
とある王国が買い占めた土地に建つ巨大な要塞『エクゼター』を本拠地に活動をしている。

ユニオンメンバーになるには、騎士としての十分な名声、もしくは一等以上の位をもった騎士による推薦が必要。
シンボルマークは、青地に銀のガントレット