ENo.0640　佐々神 玲狐

『私思うんだ。このままじゃダメだって。』
「…………唐突に、何。」

前回のコロッセオで派手に壊れた戦車の整備中、唐突にレムセアが呟く
思わず手を止め、レムセアの方を見ながら僅かに怪訝な表情を浮かべる

『だってさぁ、いつもやる事一緒じゃん？』
「……そういう物だからね。」
『うん、それは分かるけどいつかこの戦い方も通じなくなる時が来るかも知れないじゃん？』
「…………一理はある。」
『だから別の戦い方もできるようにするべきじゃないかと思うんだ。』

なるほど、と佐々神が頷く。
言ってる事自体は間違っていないように思える。事実、戦場に大きく左右される戦法ではあると思っていた。

「……うん、まぁ。……言いたい事は分かる。」

けど、と続けようとした佐々神よりも早く、レムセアが満面の笑顔を浮かべた。

『そんなわけで買ってきました狙撃砲！これで名実共に戦車だぜ！！』

レムセアが戦車の傍らに置いてあった長い円筒状の包みを開ける。
そこには見事な戦車の砲身が鎮座していた。

「…………………………………………」
『どや、凄いやろ。結構火力あるんやでこれ。前回砲塔もちゃぁんと買っておいたしこれで戦えるべ！』
「……勝手に買ってきたの？」
『なーにお金に余裕ない事くらい知っとるがね！こいつで稼げばええやろ！！』

ガシ、とレムセアの顔面を佐々神が掴む。

『アアアーーーッ！！いけませんお客様！！こちら店内でのアイアンクローは禁止となっておりまアアァァァーーッ！！』
「…………無駄遣いは、良くない。」
『hai!!!分かりました！！次から気を付けます！！次から！！』

佐々神がゆっくりと手の力を抜き、小さな溜息と共に手を離す。

「…………まぁ、戦果次第。……戦果悪かったら、レムセアが砲弾。」
『いくらスリムビューティーな私でも砲身に体は入らねーなー！』
「冗談。……でも、戦果悪かったらお仕置きは考える。」
『なーに砲手はこのレムセア様だからジョブジョブ。任せとけって！』

ケラケラと笑いながらレムセアが佐々神の肩を叩く。
その軽さにまた一つ溜息をつきつつ、砲身を戦車に取り付けるべく工具箱を開くのだった。

苗床を研究するためのユニオンだよ