ENo.0265　ジュネリア＝ハーヴェスト

相手側に謎の機体が存在するということは情報として知っていた。
100発のミサイルを放つというミサイルキャリアーだ。
廃棄した音声データの中にもその情報が含まれていたが、わざわざそれを開かなくともそこらじゅうでライダー達の噂で十分必要な情報がわかる。

　100発のミサイルはむしろ大きな問題ではない。どちらかというと戦場から姿を消すことが問題だな。

そう考えていたが、結局のところ大きな被害は出なかった。というのも霧が濃く要塞側の前衛が機能していなかったのだ。
自室に戻り各地の戦場を簡単に確認する。未確認機が多いということでコロッセオランカーや腕に自信のあるものが集まりやすかったことも影響したようで、他のミッションでは多少の被害が出ていた。

　今日も何人か死んでいるようだが、この中にはいないだろうな。……その程度のはずもあるまい。

そのまま次回のミッション登録を済ませるといくつかのメッセージがたまっている連絡記録と取引委任システムを開く。
ジュネリアはパーツやパーツ作成に使用する取引をほぼすべて代理システムに任せていた。
自分のほしい部品や素材、それらを使用したパーツを取引で見つけてきてくれる。
とある企業が経営しているものだがなかなかに使い勝手がよかった。

　ここの企業や市場形態は様変わりしてしまったように思うが、ライダーに不利なことはしないだろう。
　死んでしまっても懐は痛まないが、早々替えのきく存在ではないというのが私たちのここでの立ち居地だろう。

そう考えながら並んでいる取引をすべて許可していく。
もちろん自分の仇やコロッセオでの相手側などと取引している可能性もあるが、ジュネリアはそういったところをすべて割り切っていた。

続いて届いたメッセージに返信を行う。
僚機の斡旋システム同様に、取引相手からお礼のメッセージが届いたりもする。もちろん無視してもよいのだが、ジュネリアは律儀に返事を打っていた。
もちろんめったなことでこちらから打つことはないが、最低限の人間らしさを残していると誰かに主張するかのように、戦場とは違うお礼の言葉を並べる。

やがてその作業も終了したらしく、メッセージシステムを終了する。
そして次にジュネリアが開いたのは、簡単に言うと、他者の端末をのぞき見るためのものだった。

　隠されているなら、暴いてしまえばいい。

一人でそうつぶやいた。

ただ無言で射撃する