ENo.0505　セイラン＝ルーデ

クロガネとの約束を済ませたセイランは、早々に拠点へと帰っていた。
普段ならぶらぶらと街中を徘徊する彼女にしては珍しいことであり、ルーチェが知れば『明日は大雪かな』とでも言っていたことだろう。

「さて……どうしたもの、かな」

明らかに攻勢を強めた企業連盟。その影響はこちらにも大きく出ている。
セイラン自身はそれほど変わった点はないが、ルーチェとユメはどちらもその機体を墜とされていた。
今後ますます戦況は厳しくなるだろう。自分本位に動くセイランが、何かしなければと考える程度には。
逆に言えば、この難局さえ乗り切れば……その先に、何かが開けて見えるのかもしれない。

「とはいえ、やることが変わるわけではないが」

ルーチェから何度か、心配するような言葉を掛けられている。セイランの戦闘機動は、まるで自分の命を軽視しているようだと。
それに対して、セイランは何も言わなかった。どんな方法であれ、撃墜されればそれまでだなどと、そんなことを言えば……止められるだろうから。
彼女の共に歩きたいという思いを無下にしない方法は、そう多くはない。死にたくは無いし、生き残るための努力も最大限に行うが……それと同時に。

「ただ待っているだけというのは、死んだも同然……なぁ、そうは思わないか？」

誰かに語りかけるような口調。それに反応したのか、廊下の角からおそるおそるといった様子で、ユメが顔を出した。

「……ご、ごめんなさい……」

「謝らなくて良い、此処はお前の家でもある。……それでどう思う？」

「……何を言っているのか、よく分かりません……」

困惑した表情のユメ。元々安定を求め、安心できる場所を追い求めていた彼女には、セイランとはまた違った思いを抱いているのだろう。
ハイドラライダーの境遇は変わった。企業連盟は敵対し、それとは別の様々な組織がハイドラライダーの力を求めている。
共通しているのは、あくまでハイドラライダーの地位は高いという点だ。どこに属するのであれ、生活が直接脅かされることはないが……想像していたよりも多くのことが起こり、不安を感じているようでもある。

「それもそうか、お前は元々荒事が苦手だものな」

「……、はい……でも」

「……？」

「……変わらなきゃ、っていう思いは、どこかに、ありましたから」
「誰かを守れるような……そんな風になれたことは、良かったかも……です」

以前とは見違えるような、力強い瞳。流されてはいても、今はそこに、明確な自分の意志がある。
どこか美しいものを見る目で、セイランはユメのことを見つめる。困惑の色を深めるユメ。

「……な……なんですか？」

「いや……、……そうだな。もう少し落ち着いたら、一緒に茶でもどうだ。それで、お前の話を聞かせて欲しい」
「どこで生まれて、どんな風に育ったのか。もちろん、無理にとは言わないが……」

「……、……。……考えて、おきます……」

セイランの意図を測りかねている、そんな表情。それを見て、少し楽しそうに笑うセイラン。何もない、ただのデートのお誘いだというのに。

「楽しみにしている」

そう言って、自室へと足を向け……そういえば、といった風に口を開いた。

「私の部屋には、好きに立ち入ってくれて良い。お前なら、特に変なことはしないだろう？」
「私に何かあったら、好きに色々と持って行ってくれ」

「え？あ……」

ユメが何かを言う前に、セイランはその場を立ち去ってしまう。
それが誤解を招く振る舞いであることに、セイランは気が付いていなかった。

残像領域のどこかの町にある、行き場のない者の寄り合い所。運営は気まぐれ。
利用・改築自由の集合住宅。2LDKの5階建て。
管理者に御用の方は、3階の角部屋まで。

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ユニオン活動：現在は制御*5
ユニオン購入：経験値+1、またはAP+10%