ENo.0602　如月

チーム如月の当事者だった人間として、その記録を残すべく筆を執ろう。
どこから書き始めよう。

まず、私がチーム如月を抜けてからもう二週間が経ったが、身辺もようやく落ち着いてきた。
今の私は組織のアクチュエータ開発部門にいる。相変わらずウォーハイドラ作りに携わっているわけだ。

いや、訂正しよう。厳密には『久し振り』にだ。
ハイドラライダー量産計画に伴ってデザインされたあの機体は、便宜上はウォーハイドラと呼称されてはいたし、当時の私は疑うことなくそれをウォーハイドラと捉えていたが、距離をとってみて認識を改めた。
あれは決してウォーハイドラなどではない。
敢えて形容するならバイオ兵器、ただの化け物だ。
それもパイロットを含めたうえでだ。

量産型ハイドラライダーは事実上の最終工程を完了し、プロジェクトは解散した。
しかし成果物は今後も実戦投入され続けると予想されるし、プロジェクトメンバーもまた依然として健在しているのだろう。
なぜなら彼らは『如月』そのものになったからだ。

プロジェクトの研究施設が在った場所は今は無人の更地だ。
結論からいって、これはグリスター・システムの応用とバイオ融合制御の結果、そして生命素子機構のせいだ。
チーム如月は、領域瞬間霊送機能を施設全体に連結させ、バイオ融合の副作用である素子侵食の逃げ道を作り機体の代わりに引き受け、ウォーハイドラごときの些末なシステムとは比するべくもない施設設備によって制御することにした。
それにより当座の問題はすべて解消されて、プロジェクトの進捗状況は大きく改善される見込みだった。
だが一週間前の実践で計算外のことが起きた、いや、計算から漏らしたというべきだろうか。
すべては生命素子添加プランの採用により招かれたといえる。

バイオ融合の制御不全は通常ではあり得ないことだ。
しかし如月オリジナルの生命素子、あれは最期まで彼らにとっては手に終えない代物だったのだろう。
バイオ融合による機体侵食は素子が原因だと思われていたのだが、やはりというか、次元連結の過程で侵食現象を促進させていた。
失敗は予想はできていたはずだ。
それでもなお、実験に踏み切ったのは、彼らが生命素子を信じ、なにより入れ込んでいたからだろうか。
私はそうではなかった。だからここにいる。
彼らはそうだった。そして生命素子に覆われて一つの肉塊となり、空間の隔ては今は取り去られてパイロットデバイスと共にウォーハイドラの一部となった。
私達が志して作り出そうとしたのは人工のハイドラライダーだったのに、私達が生み出したのはただの生体兵器になってしまった。

そろそろ定刻だな。
ミッションプランはどういうわけか主任から共有情報として送られてきている。
元チームのよしみ……、というよりは記憶の混濁かもしれない。
今の彼らがどういう状態で、どういう存在なのか、よくわからないから。

人気も無く、寂れた区間にひっそりと佇む格納庫がある。
入り口は常時開け放たれていて、その横に取付られたプレートには《疾風》の文字が刻まれていた。

時々この格納庫を出入りする者達がちらほらと見受けられる。
此処を根城とする彼等は、戦場を駆け回る斥候部隊。

敵を発見する、敵の動きを妨害する、敵の攻撃を引き付ける等……
そんな役目を持つ者たち。

きっと、目立たず戦場で活躍してくれるだろう。


【斥候戦闘部《疾風》】
　└ひたすら制御あげるだけ。
　└基本的にまったり&自由
　└ロールは気が向いたときにぼちぼちやろうぜ
　└ユニオン活動はずっと制御×5、ユニオン購入もずっと機動力3%
　└参加希望であれば背後Twitter@Ci_ktdm 又はメッセージで連絡してくださいませ