ENo.0517　スタニスワフ・クビツァ

『再起動は……どうやら果たせなかったみたいですね』
「ああ」

『でも見てください。これです』
『コロッセオランキング1位、スタニスワフ・クビツァ』
『忘れ物、こういう形で実るとは……』
『これでクビツァさんも有名人、歴史に名も残るでしょう』
「ああ」

『霜の巨人、見えてきましたね』
『気温も相当に低くなってきました、外には出られませんね』
「ああ」
『……どうかされましたか？』


「ああ、色々考えていてな」
『らしくないですね？』
「そいつぁあ……ひでえ言いようだな？」
『あ、それはわかりましたか』

「俺が生まれた時も、こんなに寒い日だった、らしい」
「育つ中で、育ちの国も戦争を起こした」
「俺は必死に育って……志願して……爆撃機に乗った」
「ひたすらに、出撃しては相手を攻撃する日々だった」
「知り合いはよく死んだが……忙しかったが……充実した日々だった」

「それが、墜落して、足を負傷して、この様だ」
「そうしているうちに、戦争も終わった」
「圧勝だ」
「俺に残ったのは……役に立たねえ体と、やることのない平穏な日々だった」

「俺は、戦いたかった」
「同時に、誰かに認めてもらいたかった」
「肯定してもらいたかった」
「それが、今までの俺だ」

『はい』
「……淡白な答えだな？」
『ふふふ』
「ああ、くそ、それがどうしたってところだな」
『はい』
『では、戦いましょう』
「ああ、そうするか」

『……ところで、どうやって戦う予定でしょうか？』
「ああ、簡単だ」
「ありったけの噴霧を叩き付けろ、それで十分だ」
『単純ですね』
「ところが事態はそうでもねえ」

「この寒さ……空気中じゃ微小な水分も凍りつく」
「凍り付いた水分は……針のような形になる」
「加えてあの精巧な機械だ、これを噴霧で叩き付ければ……」
『中に入れば停止する、というわけですか』
「その通りだ」

『では』
「ありったけを叩き込め」
『了解しました』

ブックメーカーするゴリラです