ENo.0042　ジル・スチュアート

「……また、はじまるみたい」

自身の漆黒のハイドラ――Anubisの肩に腰掛けながら、声を掛けた。
5年前の戦乱の後、霧が晴れてからは大きな戦いのようなものはなかった。
それが今になって、突然だ。
……それも、ドゥルガーだと言う。

「ずっと、平和だったのにね」

少女は物悲しげな表情を浮かべた。

『戦いには出るのか？』

漆黒の機体から、凛とした女性のような声が響く。

「……守りたいものがあるから。それに――」

『……それに？』

「ドゥルガーだなんて危険なもの、放っておいたらどうなるかわからない」

少女の表情は一変し、目つきが鋭くなる。

忘れるわけがない。

5年前の戦争で失われたものたちを。

「……あのときは、私もまだ子供だった。だけど――」

「――今の私なら、守れるものだってあるはず」

居ないかもしれない。
だけど、居るかもしれない……そんな、知人たちを。

5年前とあまり変わらない風景。
適度に整理もされており
WHのメンテナンスもしっかりと行われている。

……いつ、”そのとき”がきてもいいように。