ENo.0120　Nightingale

机上の端末は先週の戦場の記録を映し出していた。
自ら選んだパーツで構成した《Nightingale》の初陣は、マグス――ハイドラを極力動かさず、
HCSの機能を可能な限り情報収集と学習にあてる戦闘システム――としては上々の結果に終わった。
戦場を見渡すだけの余裕も持てた。撃墜された後の話ではあるけれど。

早々に退場したのだから当然戦果は芳しくない。
今は許されても、契約がある以上、いずれ結果を求められるはずだ。
わたし自身、自らの運命を決める場で、いつまでも他力本願でいたくはない。
何より退屈だ。

端末がメールの着信を知らせてくる。
白兎生体化学の担当者から――おそらくは次回のミッションの詳細だろう。

……5年前の禁忌戦争の経緯を、メルサリアという人物の経歴を考えれば、
この企業がドゥルガーに最も近いように思えたが、彼らの語る目的は曖昧に過ぎた。
今からでも他の企業のスタンスを確認して、より目的の近い勢力に所属すべきかもしれない。

それに――白兎には彼がいる。この名でどこまでごまかせるものか。
そういう意味でも契約先の選択が早計だったことは否めない。
それでも特に目立つ働きをしているわけではないから、目に留まることさえないかもしれない……

――今回の件、彼女のことも含めて不問にします。ですから、二度と僕の前に姿を見せないでください。

最後の対面が脳裏によみがえる。
あの時はまだ《父》がいた。けれど、今となっては――

彼はいつ、わたしに気付いてくれるだろう？