ENo.0125　偽りの射ち手

「一つ聞きたいことがあるんだけど」
「……掘削機とはいえ、視点が固定なのは厳しいと思う」

……そうだ、初戦闘の時にとんでもなく困ったことがこれだ。
ディスプレイは一つしか無く、潜望鏡を兼ねた地上カメラに切り替えれば地下の様子は見えなくなる……どうしても、こればかりは慣れろというには厳しいものがあった、

＜設計上はメインカメラが4個、サブカメラが8個付いている＞

「ディスプレイは一つだけど」

＜当たり前だ、その答えがこれなんだからな＞

「……まさか」

操縦棺の天井から伸びるプラグを見る。……そういうことか、と納得するもどうして最初から言わなかったのか。

＜そうだ、そのまさかだ＞

＜このプラグを、お前の目に、繋げ。……視界の他に利点もあるんだぞ、例えば……ほら、さっさと繋がないか＞

＜左目だけは俺と視界を共有しているのは知っての通りだ、そして＞
＜それを利用することでお前の手間を減らすことが出来る＞

＜実質的にはハッキングと同じことの様だがな＞


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　キール･ヘイズ……キールに乗ってから初戦闘を終え早数日、再び訪れた戦場にて。そろそろ戦闘が手をこまねいて待っている頃だろう。第二の霧、ともいうべきうっすらと、しかし狼煙のような煙が蝦子さんの機体から上がっていた。
　何やら、バイオ兵器なるものを従わせるために必要だと聞いている。

　戦闘後に行った損傷の確認ではむしろ蝦子さんの方が被弾箇所が多い始末で、護衛が出来ているとはとてもではないが言い難い状況であったことが妙に悔しく。
　
　「機体テスト」とは言われたが、やはりそれなりの戦果は出したかったわけであり……今立っている（？）この戦場にて「今回は違う」というところを見せてやりたくもあった。

　　「GEKOの後方11時、少々遠いけど反応が一つ」
　　＜よし、上方60度に位置するまで近付くぞ＞
　　「了解」

　同じく蝦子さんから借りて撮影機材を積んだバイオ兵器からの空撮映像を確認しながら、どちらがオペレーターなのかわからないようなやり取りを交わして地中から敵の足元へと潜り込んでいく……そして。

　　＜もーらったー……今だ！＞

　わかりきった号令を受けながら砲の角度を定め、天井を溶かしながら特殊加工の高射砲を突き上げ……撃つ。
　
　　「命中確認、関節か何かに当たったと思う」
　　「他にも接近反応はあるけど、今の不意打ちで警戒して離れたみたいだ」

　カメラが合計12個（と一つ）付いている、というのは本当のことだったようでその中には補佐となるシステムも含まれていたのか今のような不意打ち射撃の成功率もかなり上がっているように思えた。

　＜砲のダメージが大きいぞ、まだ予備は5本あるから遠慮なく使い潰せよ＞
　「……直すのはGEKOさんなんだけど」
　＜護衛を頼んだのも彼女なんだからな＞

　……そういう問題じゃないと思うんだけど。

それは地中に出来た、真っ直ぐに伸びる洞窟のような空間だ。

一つ明かりを付けたのなら、きっと貴方はそれが人工のトンネルのようなものだと気付くだろう……そう、丁度中型のハイドラが通るほどの。

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