ENo.0184　パスタの妖精

食わなければ食われる。

ものが乏しいこの北の大地では、
あたりまえであり、仕方のないことだった。

いずれ、食われ死にゆくとも、
息絶えるその瞬間まで生きる、
それが生命の営みとして正しいはずだ。

そう、己に言い聞かせながら、
彼女はもぐもぐと口を動かす。


何かに導かれるように彼女は進んだ。

道しるべがあるわけでもなく、
足跡があるわけでもなかった。

ただ、空虚な頼りに身を任せた。

そこらに散らばる鉄くずと、
そらに漂う霧の網。


灰色の世界に彩はなく。


｢といってもほんとこの霧、どうにかならないのかなぁ...｣
右手にフォークを、左手にパスタを携えながら、
霧中から躍り出る敵を鉄片にしていく。

｢パスタさんはレーダーも頭も無いから、どこに何がいるのかよく分からないのに〜
ほんとこわいなぁ🍝｣
鉄片をフォークでちぎり、ひょいとフリスビーのように投げる。

からんころりと小気味の良い音がした。
すると、ババババと これまた小気味よい音が通り過ぎていた。

｢なーんか操虫棍みたいに空バーンってぶっ飛んで、びゅーんって落としにいけたらかっこいいなぁ｣
そういいながら、遥か上空にいるであろう戦闘ヘリにフォークを向ける。

｢あっ！ビームとかでもいいですね！パスタビーム🍝（ﾝﾋﾞﾋﾞ）｣
そんなビームが出るはずもなく、 ﾌﾞﾝﾌﾞﾝとフォークが霧を切るだけだった。

｢まぁ、死ななきゃ勝ちだし、適当に寄ってくるのだけ倒していきますか🍝｣
もぐもぐと口を動かしながら、
呑気な妖精は霧を切る。

パスタさんのキッチンですね。おいしいよ🍝