ENo.0146　フレースヴェルカ

空は遠く、遥か向こうにある。

誰にも手が届かないほど、ずっと遠くにある。

この空はが本当に空だというのなら。

きっと、それでも手を伸ばす。


おそらく今はその事を追求するには難しいって言うのがわかった。
だから、自分がやれることを少しずつ進めていくしかない。
そのために真っ先にやることは、生きる事への執着を残すこと。
実際には、まず自分の知らない事を埋めていく事。
失くした物を、手に取らなきゃいけない。
たとえ、それが望まれなかったことであったとしても。
取った後に後悔するとしても。
その後悔を捨てる気で行かないといけない。

やる事は決まったけど、今やれるわけではないので。
今日はおとなしく。ちょっとした日常を纏めようと思う。
実際、日常っていうのは執着につながる、とは思う。思う。
なので、爪痕を残すように。その事を纏めよう。

――爪痕って言い方なんか悪い気がする。


ガラクタの山の主。亡霊。モーヴェ。
割と愉快でカレーが作れる。ただ、亡霊なので当然本人が食べれない。
わたしはカレーが作れないのでその点についてはもちろんまかせっきり。
几帳面なのかもしれないけど、そうだったらガラクタに住まない。
ハイドラは大きな帆船型。……どういうことだろう。主に規模が。
わたしが使ってるハイドラが普通に乗れるくらいな気がするね。

龍の子。綺麗な翼。フェティヤ。
結構人懐っこい。勢いがある子。車掌……車掌ってなんだろう。
見るからに人型ではあるんだけど、翼があるのでそこは人じゃないんだろうなと。
ただ、正直別に何も不思議では無いんだろうなぁって。
ハイドラは……電車らしいんだけど。よくわからない。これもでかい。
もしかして、ハイドラって基本的にでかいの？

髪の長いにーちゃん。ブラッド。
ちょっと遅れて挨拶しに来た。普通の人っぽい。中身がすごいとか言わなければ。
カレーが好きらしい。わたし？　いや、その、カレーがよくわかってない。
だから作れないんだけど。ともかく、結構とっつきやすいあんちゃん。
ハイドラは不思議な音を響かせる、それなりのやつ。
うん、やっぱ標準はこれくらいのはずだよね。

自称亡霊のようなもの。メーテルメテルカ。
…………なんて言えばいいのかよくわかんない。いや真面目にわからない。
少なくともわたしよりはいろんな事を知っている、ふれんどりーなの。
サンダーガールとか呼んできたけど、なぜかそれで周りにも認知されてた。
ハイドラは航空機…のような何か。何か……うん。やっぱ理解できなかった。
まぁ、特注品なんでしょ。


以上。なんかエビみたいな子がいたけど省略。エビ。えび……

……濃いなぁ。


「貴方もですよ」
「なんでそう言ったの」
「言うしかなかったので」

壊れてしまった、もはや時代遅れ、彼氏にフラれた腹いせ。
あれこれの理由で積もったジャンク品の山の中。
打ち捨てられたようで、実はとても手入れの行き届いた三段櫂船型ハイドラが一機。
ある一人の幽霊が、そこで暮らしているのだ。


「分かった。オレ、料理下手じゃないんだ。

雑なんだな」