ENo.0452　レイン・ロックサイド

　端末に配信されたニュースの一面にはフブキ・ライダー斡旋商会の会長が亡くなったとの記事が掲載されていた。

「フブキ・ライダー斡旋商会、か。」

　ライダーの生命をゴミの様にしか考えないような増援をさせていた企業だ。
いずれ何らかの形で報いを与えようと思っていたが…これで少しは社風も改まるだろうか？
そう考えていた時に通信が来た。

　トゥルルルル…

　ピッ。

「はい、レインです。」

「僕だ。そちらの状況を報告してくれ。」

「遺跡の内部は…まあ、快適とは言えませんが今のところ活動に支障はありません。
　私以外の多くのライダーも取り残されていますしね。
　ただ、正直に申し上げて、状況はもはや我々の手には負えないものだと思っています。
　実際にこの遺跡が動き出す様を見て、そして他の企業群の動きを見て、我々にはどうしようもないものだと確信しました。」

「……そうか。オマエがそう言うのか。」

　動揺が伝わってくる。
今まで私は彼に対し、自分の意見を強く伝えたことは無かった。
それは、彼がロックサイド一族の主であること、彼の性格的に意見を素直に聞き入れるとは思えなかったからだ。

「ええ、私は何とか巨人の内部から脱出する術を見つけ出します。
　…もし、私が戻れなかった際、これからのこと、そして家の者を宜しく頼みます。」
　
「おい、まだ脱出しろとは伝えていないぞ。
　まだ…。」

「おしかりは戻ることが出来たらお受けします。」

　ピッ。
通信を切り、彼からの通信を受け付けないように設定した。
果たして、私が戻ることが無かったら、ロックサイド家はどうなるだろうか。
それは酷く気掛かりだったが、この選択に間違いは無かったと思いたい。
私は確かにアズエルド家に仕える者だが、同時にロックサイド家を率いる者なのだ。
自分の判断で動くべき時は動かねばならない。

アズエルド家

　残存領域辺境のとある王国に権力の地盤を有する貴族。
現当主は病に臥せ、次期当主とされるアロー・アズエルドが当主を代行中。

　政変前は王国内でも屈指の数の騎士を擁していたが、政変で多くの騎士を失い、王国内での発言力も大きく衰えた。
現国王に対して批判的な姿勢を取っており、領内及び王国内で活動する武装勢力「真実の声」を裏でバックアップしているとの噂も立っている。