ENo.0452　レイン・ロックサイド

　センチネル機との初遭遇、そして敗北。
事前に入手していた戦闘ログから自分なりの対処法を持って備えていたが戦力差を覆すには至らなかったようだ。
猛省しつつも戦闘後にネリー・アイシャムの生存を確認し安堵する。
流石に彼我の戦力差を見極める冷静さは持っていたようだ。

願わくば、このままルートのことを過去の記憶としてしまうことを望む。
人の死を過去のものに出来なかった者は死に引き摺られる。
ルート・ロックサイドがそうであったように。

　ニュース、そして様々な勢力からの情報が途切れる間も無く飛び込んでくる。
遺跡自体がドゥルガーだという情報は確かなのだろうか？
五年前の禁忌戦争、当時実際のドゥルガーと戦った者ならばその真偽が分かるかもしれない。
ドゥルガーとは遺跡ほどの巨大な機体だったという事か。

　現地に来て確認すればするほどに、この遺跡に纏わる力は手に負えないものだと思い知らされる。
我が主や、我が従弟は辺境の権力争いや、一個人の仇討ちに使おうなどとよくぞ思ったものだ。
そう心で毒づくが、だからと言って任務を放り投げる訳にはゆかない。
引き続き遺跡の調査を続行する。

………
……
…

　フブキ・ライダー斡旋商会 本社 350階 会長室

「『倫理観の欠如した企業』か、今となっては的を得た評価だったと思うよ。」

　一人の男が拳銃を構えながら語りかける。
語りかけた相手はこの部屋に唯一置かれた驕奢な造りの机の上に鎮座している小さな機械だった。
そして、この機械こそがフブキ・ライダー斡旋商会会長『ウド・モンゴメリー』である。

「全く残念な形になったな。
　ワタシには全く理解が出来ないなぜキミがここに居るのか。
　なぜキミがそうも感情を露わにしているのか。
　それは怒りの感情か？」

　機械から合成された無機質な音声が発せられる。

「分からない、か。
　身体をその機械に取り換えた時に、感情を捨て過ぎたようだな？
　誰だって取り交わした契約を違えられ、更には用済みだとばかりに殺されそうになれば怒りくらいする。
　幾ら私の顔の半分が機械で出来て居ようと、私は貴方ほど心を失っちゃいない。」

「そうかだが警備は万全の筈だ。
　なぜキミはここに来れた？」

「貴方のやり方に付いて行けなくなった、そう思っている者は案外多かったよ。
　会長は変わってしまった、以前は越えなかった最後の一線を越えるようになってしまった、とね。
　彼らが手引きしてくれた。」

「カレらが望む会社を目指すべくワタシは機械の身体に移ったのだがな。
　所詮は人間の器に囚われた者達だったか。
　そしてキミがワタシを殺すいや壊しに来たのだな。
　つくづく人間的な行動だ。」

「それは誉め言葉だと受け取るよ。
　機械に移った貴方からは理念が消え去り、ただ会社の利益の為に人を道具にし過ぎた。
　残念だ、以前の貴方ならこういう結末にはならなかっただろう。」

「理念か確かに人の身体を持っていた時はそんなものが有った。
　だが機械の身体を得たワタシには会社を繁栄させることが何よりの最優先事項になった。
　違いはそれだけなのだがな。」

「…これで契約を正式に解約する、モンゴメリーだった者よ。」
　
　銃声が響く

　銃弾を撃ち込まれた機械が床に転がり落ちた。

「ガガ…ザザ……この先キミはどうする…？」

「人間だった時の貴方との約束を果たそうと思っている。
　形は変わってしまったが、それを果たすのが私の役目であり…責任なんだろう。」　

　機械を再生不可能なように破壊した男は去って行った。
翌日の新聞にはフブキ・ライダー斡旋商会の会長が亡くなったとだけ報知された。

新聞広告欄
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…
……
………

　着信が有りました。再生しますか？

　ピッ。

「次はミッションAだ。
　未確認機『エウリプテリダ』に警戒を払え。
　加速性能・格闘性能は並の機体とは比較にならない。」

アズエルド家

　残存領域辺境のとある王国に権力の地盤を有する貴族。
現当主は病に臥せ、次期当主とされるアロー・アズエルドが当主を代行中。

　政変前は王国内でも屈指の数の騎士を擁していたが、政変で多くの騎士を失い、王国内での発言力も大きく衰えた。
現国王に対して批判的な姿勢を取っており、領内及び王国内で活動する武装勢力「真実の声」を裏でバックアップしているとの噂も立っている。