ENo.0452　レイン・ロックサイド

　不明な差出人のメッセージが届いていた。
嫌がらせか悪戯の類かと思って即座に破棄しようと思ったが、領域拡散精神遊離環なる単語を見て思いとどまった。
その後暫く調査をした結果、どうやら遺跡に関わったライダーに広く送られていたメッセージであり、このメッセージの主こそが恐らくルート・ロックサイドの仇なのだと思われた。

　仇討ち、思えばその思いに駆られたからこそルート・ロックサイドはハイドラのライダーとして戦場に出た。
皮肉な話だ。
実を言うならば、ロックサイド家は家訓で仇討ちという行為を禁止している。
ハイドラの騎士として存続するロックサイド家は戦うことが宿命づけられている。
だからこそ、ロックサイド家の面々は敵を多く作り、同時に多くの敵を屠って来た。
そんなロックサイド家の人間がどうして、仇などという正義がましい言葉と想いを纏えるだろうか。

だが、ロックサイド家の縛りから外れたルートは仇討ちに走り、そして命を落とした。
ロックサイド家を纏める身として客観的にその事実を見るならば、それは愚かなことだった。

「本当に愚かだ。」

　呟く。
先の政変で多くの人材を失いながらも、ロックサイド家は私怨に駆られて復讐の為に動きはしない。
主である者の意思に沿うようにのみ動いている。

「……。」

　しかし、時代は後戻りせずただ先にのみ進む。
何時までも過去のままで在って良いとは思えない。
そう思い始めたのは、この身にロックサイド家の運命を背負い、その重みに耐えてきたここ数年のことだ。

「何者かは知らないが、仇…その一言ではない、全ての為に討たせてもらおう。」

アズエルド家

　残存領域辺境のとある王国に権力の地盤を有する貴族。
現当主は病に臥せ、次期当主とされるアロー・アズエルドが当主を代行中。

　政変前は王国内でも屈指の数の騎士を擁していたが、政変で多くの騎士を失い、王国内での発言力も大きく衰えた。
現国王に対して批判的な姿勢を取っており、領内及び王国内で活動する武装勢力「真実の声」を裏でバックアップしているとの噂も立っている。