ENo.0107　戦闘人形『カラミティ』

手術を終え、部屋に戻った我の目には
とんでもないものが映った



「イビルフォース――貴様、何故」



我が機体が、一人でに動いていた

目隠しの奥の目は視界を得ているようだし
その四肢は自由に動かせているようだ――ガレージの中なので、慎重なようだが

イビルフォースが此方を認識した
そっと、手を差し伸べてきた、此れに乗れということだろうか

イビルフォースの掌に乗る
運ぶ先は、腹部――本来、我が居るはずの場所

そこにあったのは――人形？



どうやら人形を入れた結果、動き出したようだ（これは後からイビルフォースに聞いた、ノエルがやったということも）
おそらくノエルにそういうつもりはなかったのだろうが（彼奴はそういうやつだ）
ある意味、感謝をせねばならないな





「戻ったぞ――我は、戻ってきた」

人形をどかす、これは部屋においておこう

「進化への道、それを辿り、我は――」

同期を試みる、有線を身体へと繋ぎ、神経を同期し――



「ぐッ！？」

熱い

熱い、熱い、熱い！！

神経が焼けるように熱を帯びているのを実感する
痛覚のない人形の身体では感じなかったものを、感じている

「あ゛、がッ……く、そっ……！」

イビルフォースが呼びかけているのがわかる
安心しろ、神経回路は増強している、焼ききれることはそうそうない
あとは我が、耐えるだけだ――！



同期して少し立ち、体内をめぐる熱も収まってきた頃

ようやく対話が可能になる

「待たせたな我が半身よ、知らぬ間に力を奮っていたようだが――」

謝罪が返ってくる、いやそんなつもりではなかったのだが

「安心しろ、貴様を責めはしない
　むしろ讃えよう、貴様の意思で、戦えたことを、最大限に」

イビルフォースの見たものが記録として我が思考に流れてくる
そうか、だいぶ暴れられたようだ

「――有機体での操縦は、まだ慣れていない
　我が身体がどのような反応をするか、未知数だ――それでも」



「それでも、我と共に戦ってくれるか、イビルフォース？」





肯定の代わりに、機体が動き出す
目指すは戦地、どうやら賑わっているようだ

我が参加しても、構わぬのだろう？



さあ、新たな運命を今、紡ごう――

闘争の度、我は此処に訪れた――

此処は107号室、我が陣地。
我の回復から昇華まで、全てを見届けた部屋だ。