ENo.0005　パアム・ライザ

　その日、国中のメディアが一人の女性に食いついた。
　二年ほどまえ、クーデターに巻き込まれ、行方不明になっていた――死亡したものと思われていた女性が、外国で保護されたというのだ。
　それも、敵国であり、歴史的にも因縁のある国で。それは話題にならない筈も無い。

　誘拐か？亡命か？クーデターは、かの国が主導したのか？しかし何故誘拐した、あるいは亡命した人物を解放すると宣言したのか？
　彼女の動向は世間の注目を集め、やがて帰国の日となると、報道は彼女に関することで染まった。

　帰国と同時に会見が開かれた。そこで人々が耳にしたのは、衝撃的な、あるいは現実離れした報道。
　クーデターと同時に起動させた、実験段階の施設。それが、女性を異次元へと飛ばしたこと。
　二年経って、全く別の、敵国にて行われていた実験が、偶然にも彼女の帰還の礎となったこと。
　そして、彼女の帰国と同時に、彼女の勤務先だった研究室と提携し、異次元に関する開発を共同で行うこと。

――それに伴う、恒久的な和平の締結を行うこと。

　それが、会見で発表された、最初の衝撃だった。


　そして、女性はその場に座っていた。会見をする側として、回答をする側として。
　……その顔面に真剣な眼差しと微笑みを貼り付けて、
内心に、ズンと重い借金という爆弾を抱えながら。

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「うー、わー」

　現在の機体から結果をシミュレートして、帰ってきた結果は見事全滅。
　必要最低限のパーツしか集めなかったとはいえ、他の参加者もいるのに結果、これである。

　確かに、前回残像領域に来たときも、どんどんと敵は強くなっていき、その度にアップデートしていたものだ。
　しかし今回、前回よりも敵は弱くなっているのかもしれないが、こちらも完全に戦力がリセットされている。
　そして、ハイドラ大隊の強さを支えたのはライダー同士の流通……すなわちパーツの売買だ。

　つまり性能の向上と同時に、パーツの多様性が生まれることで、幅広い状況に対応可能となっていたのだ。

　で、それがすべてリセットされた。
　支援団体から貸し出された――私の場合はヒルコ教団、あの奇天烈で面白い、そして前回の事変解決の鍵となった女性がいた――機体はあったものの、やはり性能面で限度があった。

　しばし経ち、マーケットに商品が出回り始めたので、ようやくまともな戦力が揃えられる、筈なのだが……

「オカネが、ありません……」

　あの日。残像領域から帰還した私が辿り着いたのはとある工学研究所……それも、敵対国というか仮想敵国というか、とにかく祖国と関係が本当によろしくない所だった。
　その研究所では次元移動の実験を行っており、そこに機体ごと乗り込んでしまった。
　そして当然の如く拘束された。私は本国で行方不明扱いとなっていたし、研究所は閉鎖敵環境であったから、語った残像領域の出来事は一定の説得力をもって受け入れられた。

　しかし、問題があった。

　借金だ。

　帰還した際、機体によって機材をいくらか踏み潰してしまっていた。私自身も工学に携わっていたから、壊した機材を一瞥するだけで気が遠くなった。
　無論、わざとでは無い。むしろ不可抗力と言うか、機体が出現する場所は慎重に選ぼうとしていたのに、出口をわざわざ用意していたんだからそちらのミスと言いたい。
言いたいが、敵国の人物である私に責任が被せられるのは至極当たり前の事であった。

　しかし国に帰ることすら叶わないかもしれない状況にあったが、一つ天啓を得た。

　機体だ。

　私が乗ってきた機体は、単独で次元潜航を可能にする。それは研究所が求めている物であり、莫大な金を生み出す金のガチョウだ。

　だから、機体を質に……正確には、人工筋肉やプレディなど、私の国の物以外の、機体を構成していた物を研究所に売った。

　まあ足りなかった訳ですが。

　国に無傷で届けられ、国を超えた研究の提携が始まったのは良いことだが、結局私は借金を抱え、ダブルスパイ……とまではいかないが、送り込まれた残像領域で発見した次元潜航に関わる素材を優先的に流すことになったのだ。

　だから、素材を稼がねばならず、だからオカネが必要で、でも


……借金があるんですよねえ………！！！！

　前回ちょっと調子に乗りすぎた。楽しいからってパーツ買い漁ってたら僚機にお金をついつい借りてしまった。最終的には一方的に押し付けられた気もするけど。

　まあ、だからこっちで返済があり、あっちで債務があり、だから首がまわらない訳で。

詰んでません？


　とりあえず、生き残ることを第一にすることにする。

　




　逃避とも言う。

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それは大きな倉庫。―――ただし外部から何か引きちぎられたような跡がそこかしこに見て取れます。

外からひとまずの補修がされており、ハイドラの整備施設などが備え付けられているようです。

また、倉庫の脇には、油臭いパイプベッドが備え付けられたバラックが存在しており、時折、珈琲の香りが漂ってきます。
「……もうちょっと居住性高めましょうか。」



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・射撃特価ユニオンです。

・一応参加自由ですです。