ENo.0261　不破　源蔵

……はぁっ！

気迫の掛け声とともに、大太刀を振り下ろす。

一拍おいて、目の前の装甲DR『ポーン』が両断される。

……ふう。

息子が遺したハイドラ『ショーグン』。

人とほぼ同じ形状をしているためか、
機械に疎い自分でも直感的に操作することができる。
また意外なことに、ハイドラの操縦においても間合いを始めとした剣術の経験が活かせる。


（これであれば、戦地への貢献も、我が工房の名を広めることもなんとかなりそうだ）


初出撃で上手く敵を屠り、自身は未だ無傷であるという状況。

それが慢心を生む。
戦場にあるまじき余計な思考。


……戦というものは、そんな罪に対して即座に罰を与えてくる。
源蔵の背後、霧の向こうに粒子の光が灯り、蓄積し──

源蔵が反応する頃には『テンペスト』のアクエリアスから放たれた粒子のエネルギーが『ショーグン』を包み込んでいた。


けたたましく鳴る警告音、爆発音、エラー音。
呼吸に混じってくる煙の匂い、炎の熱、血の味。


……機械に疎い自分にも理解ができる。
これは致命傷だ。


……最早これまで！





















…………っ！？



……聞こえるのは、鳥の鳴き声と木々のざわめき。
呼吸に混じるのは、湿っているが涼やかな空気。


混乱した頭を鎮めて見回せば、ここは間違いなく自分の部屋で、自分の布団であった。
窓の外には工房も見える。


……夢、か。　妙に現実感の伴う夢であったな……



頭を振って立ち上がる。

あれは夢だが……あり得た可能性。
今後もあり得る可能性。

そして、息子が最期に体感したであろうもの。


……儂はまだ戦わねばならん。
もう、他に生き方も……ない。

各種刀剣類、製造請け負います。