ENo.0228　叢雲

戦闘収入　　1100
追加収入　　90
攻撃戦果補正5.46％
支援戦果補正5.66％
防衛戦果補正11.37％
撃墜数補正　3％
販売数補正　0.5％
休暇復帰補正6％
敵警戒値補正1.68％

合計現金収入1647
--弾薬費請求　　0
--整備控除修正額500
整備請求額　　0


目が覚めると私は寝台の上にいた。
白く低い、素っ気ないコンクリートむき出しの天井。
見覚えはあった。当然だ。
ここはヤギサワ機関の研究施設内の医務室だ。

モニターが検知したのだろう。私が目覚めるとすぐにその人物はやって来た。
一見して初老の男性。白衣を纏ったいかにもな研究者。服装に似合わず大柄にして屈強な肉体が見てとれるその老人は、堂々としてしっかりとした足取りで近付いてきた。

「身体の加減はどうかね。」

明朗に親しみやすい声色で、口元に笑みを浮かべて優しく語りかけてくる。だが目が笑っていない。彼らはいつもこうだ。上っ面に載せた薄っぺらな感情に価値など無いと言わんばかりに無機質。長く生きすぎた人間の性なのかもしれないが、生憎とこちらは真人間なので薄気味悪くてたまらない。だからついつい皮肉を混ぜて返事をしてしまう。

「死んだと思ったが、どうやらあれは悪い夢だったようだ。そうでなければ、私が知らない間に、私が不死身になったとしか思えないな。意識もはっきりしているし、肉体にはは特におかしなところはないと思うが。」

曖昧に答えたのは理由がある。このあとにはどうせコンディションチェックをして、私の正確な健康状態を測るためであって、つまりこの問答自体がただの社交辞令に過ぎないからだ。

戦場の味方生存率は47.61％。激戦区だったと言っていいだろう。
私は戦闘ヘリによる機関砲の直撃を受けて撃墜された。
マシン・オーバーロードはシステムの不具合により正常に起動せず、撤退することも叶わぬまま鉄くずの中に私の意識が埋もれていったのが最後の記憶だ。
死亡保険はかけていなかった。あの状況では確実に死んでいたはずなのだが……、なぜかこうして生きている。

目の前の老人……フェブラリー博士によると、これは味方を救った成果を評しての『恩赦』なのだそうだ。
博士のいう『恩赦』が誰によるものなのかはこの老人は明言しなかった。私が知る限りでは、ヤギサワ機関はそんなことはしない。私が死ねば新しいテストパイロットを雇うだけのことだ。

分相応をわきまえるべきなのだろう。フェブラリーの目がそう言っているし、気に入らないことだがそれは白々しいほど冷たく乾いた現実でもある。
『恩赦』の正体、ただのハイドラ乗りにすぎない私が、そのことを考えたところでどうせ何も分かりはしない。
私が向き合うべき現実はそこじゃない。
次の戦場、破壊すべき古代遺物、≪ΜΕΛΠΟΜΕΝΗ≫と呼称される兵器。あれもまた正体のわからない存在だが、こちらは敵であり間近に迫った驚異、確実に対処せねばならない問題。他のことを考えている猶予など、今の私にあるはずも無い。

次の戦いでは、いや、次もまた死ぬわけにはいかない。
そして叶うならば、共に戦う者たちもまた、出来る限り生き残って欲しいものだ。

ヤギサワ機関
かつて禁忌戦争において実験的に参戦していたチーム如月の上位組織。
クローン研究員で構成された末端組織の如月とは異なり、ヤギサワは全員がオリジナルであり『不死の研究会』の会員である。ヤギサワ機関オリジナルの研究者はその体質ゆえに精神性が極めて保守的であり、機関の技術革新を推進させるために定命の研究者かつ高い知性を備えた定命のクローンを量産し、それらを如月のように末端部隊として残像領域の各地で活動させている。なお、禁忌戦争におけるチーム如月の成果は時空震の影響により失われたが、時空震から獲た時間操作技術を発展させタイムリープによってすべて回収済みである。

現在の所属ハイドラライダーは
Eno.228　叢雲