ENo.0166　ステラ＝アレグレット

「いやぁ、すぐに見つかって良かったねえ」

彼女はそう言ってへらへらと笑う。
まあ確かに僚機の募集にすぐに返信が来たということは喜ばしいことではあるが、彼女と同じ感想を抱けるほど能天気にもなれない。
本当に彼女は命が懸かっているという自覚があるのだろうか？

「あのねえ、言っておくけど、元々は貴女の経験不足に不安があるからって出した募集なのよ？」
「うん、わかってるよ、そんなこと」

彼女はけろっとした顔で答える。
私にはどうにもそれが不愉快で堪らなかった。

戦闘経験の不足を補う為の僚機の募集、人手は多ければ多いほど良い。
その相手が戦闘経験豊富で戦場で生き残るノウハウを知っている相方なら尚良し。

手元の資料のページに目を落とす。

シータ・キンデン
女性、15歳

思わず溜息が出る。
どう考えても歴戦の戦士の筈がない。
力の不足を補って貰うハズが、こちらが補うハメになるのではないか？

「まあまあ、何歳だっていいじゃない。天才少女とか、この業界じゃ珍しくないらしいよ？」
「どのくらい期待出来るっていうのよ……珍しくないって言ったって、確率的に多くもないでしょう？」
「そうは言うけど、ベアだって子供のころからずっとハイドラ研究の最前線にいるじゃない。
　こんなにすぐ傍に天才が居るんだから、もうひとりくらい居たって不思議じゃないでしょ？」
「だから頼りにならないって言うのよ」

天才、神童……確かにそんな風に呼ばれたことは一度や二度じゃない。
それでも、自分がそうだと思ったことは一度もなかった。
天才というのは、もっと、そう………

「まあ頼りになるかどうかなんて、実際に会ってみればすぐにわかるよ」

…それも不愉快の原因のひとつだ。
募集の管理は私がしていたハズだったが
どうもステラは勝手にシータ・キンデンと連絡を取って、実際に会う約束を取り付けてしまったらしい。
初対面の相手は必ずしも安全ではないというのに……

「そんな嫌そうな顔しないでよ。第一印象は大事だよ？
　おまけに今から会おうっていうのは、15歳の女の子なんだから。
　最初っからそんなしかめっ面してたら怖がられちゃうよ」

また溜息が出る。
一体誰のせいでこんな顔になってると思っているのか。

「……まあいいわ。
　約束してしまったなら行くしかない。
　でも警戒はしていくことね」
「だから～そんな警戒してたら顔に出るって。
　大丈夫だよ。
　ほら、私、友達作ったりとか得意だからさ」

彼女はそう言って、にかっと笑う。
ああ、確かにそれはその通り。
こんな無愛想な私とも、これだけ長く付き合ってるのは貴女くらいのものだろうね。