ENo.0308　霧中ネネ

ネネは塗装屋に無理難題を押し付けていた。
「ちょっとぉ！！せっかく高い金出してペイントしたんだからもっとはがれにくいようにしてよ！！」

初出撃でしこたま被弾したビビットピンクの『キューティーコード』は見るも無残に塗装が剥げ落ちていた。
まさか被弾すると塗装が剥げ落ちるとは。青天の霹靂であった。

「いやお客さんそりゃ無理ってもんでしょ。猛烈な勢いで飛んでくる鉄があたるわけでしょ、そんな塗装あったら俺が知りたいよ。また塗りたいって話なら聞きますがね」

正論である。だがネネには正論が分からぬ。
ひとしきりヒステリックに騒ぎ立てた挙句に、諦めたのか禿げた部分だけをできるだけ目立たない様に塗装するように依頼して肩を落として帰ったのだった。

こうして綺麗に塗装されていたハイドラは、日に当たるとなんだかちょっとまだらっぽい感じになってしまったのだった。

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「う～～～～～～～～～～～ん」

自室の机に突っ伏し、パーツのカタログを横目で見て唸る。
初の戦闘動画は先程いいところだけを絶妙に編集してさも大活躍であったかのようにアップロードしたところだ。
コメント欄では賛美と中傷がいりまじりカオスの様相を呈してきたところだが、このネネにはそれよりも悩ましいことがあった。

「どんな機体構成をすればいいのかさーーーーっぱりわっかんない。」

思ったよりも弾が飛んできて、思ったより当たって、思ったより痛かったのでできればもっとこう……安全に戦いたい。でもできれば活躍したい。

僚機であるサクラバのあんちきしょうは前のほうでピョンピョンと動き回って多大な防衛戦果を挙げていた。ぐぬぬ

「とにかく動きが遅いのよね…ということはブースター…あと……なるべく痛くないように……でもプラズマ砲をうつのは気持ちがいいから……」
ぶつぶつとパーツリストと端末をいじくりまわしあーでもないこーでもないと試行錯誤を繰り返す。

この霧中ネネ、本名田中好子という女はとにかく視野狭窄であり、こう、と決めたらこう、なのだ。
結局委託ガレージに提出するアセンブル案が出来上がったのは締め切りの朝が明けてからだった。

目にクマを作ってフラフラしながらエンジニアに提出したあと、部屋のソファーに倒れ込んで寝込んだ顔は実に満足そうだった。