ENo.0082　アキ・ニタドリ

「ふぅ…」

キーボードから手を離し、一息つく。　前回の戦闘でアキのハイドラは目立った損傷もなく、無事に切り抜けられた。
しかし、次の任務まで時間がない。　手放しに喜んでいる暇はないと、夜中に一人次の作戦プランと機体の調整を行っていた。

ふと、一通のメッセージが入っているのに気が付く。　差出人の項目には……。

「アンダーソン…！」

ドクター・アンダーソン。　彼女は訓練施設「わかたか」の責任者であり、アキ達戦災孤児の育ての親でもある。
そして……俺の、俺達の倒すべき敵だ。
一瞬躊躇したが、メッセージを選択し中身を確かめる。

//MESSAGE：Dr・アンダーソン

ハイ、タキ。　アンダーソンよ。　
アキとは上手くやっているようね。
我々より先に貴方がアキを見つけたと聞いた時は正直驚いたけど、無事に仕事を行えてるようで安心したわ。
余りにも不甲斐ないようだったら迎えに行こうかと考えていたのだけれど、まだその時じゃないみたいね。
これからも二人で頑張って、私を楽しませてね？
またあなた達と会えるのを楽しみにしているわ。

P.S.　次の作戦はなかなか面白そうな内容ね。　こちらで入手した情報を添付しておくわ。　頑張ってね☆

//MESSAGE：END

「……」

思わず、頭を抱える。
あの女、どこまで知っているんだ？　何故ここまで把握しておきながら、こちらを襲撃してこない？

「しばらく泳がせておくつもりなのか…？」

まぁ、いい。　あの女の都合など知ったことではない。 添付された情報も見よう。　そっちがその気なら、こちらも精々利用させて貰う。
メッセージにカーソルを伸ばし、添付ファイルをクリック…

「タキ」

「うおッ！？」

…思わず飛び上がった。　慌ててメッセージボックスを閉じる。　振り向くと、ドア前にアキが立っていた。

「…どうしたの？　こんな時間まで起きてるなんて」

「…次の作戦のことを考えていたんだよ。　次の任務は激しそうだからな」

そう、と答えるアキは少し眠そうな顔をしていた。　もうとっくに寝ていたものだと思っていたが…。

「で、そっちこそどうした？　眠れないのか？」

「タキ」

少しからかって誤魔化そうとしたが、アキは神妙な面持ちで返してきた。

「タキには感謝してる。　私のためにハイドラを用意してくれて、こんな時間まで調整をしてくれたりして。」

「…急にどうした。」

「でも、ムリはしないで。　…もう、知っている人がいなくなるの、見たくないから」

そう言うなり、アキは少し俯いた。　彼女なりに心配してくれていたのか。

「アキ……わかったよ、気を付ける。　ありがとな」

「ん。　じゃあ私は寝るけど…」

「…ん？」

「エロ動画見るのも程々にしておいてよね！　じゃっ」

…そう言ってアキは自分の寝床に走っていった。


……見てないっての。