ENo.0432　Lloyd

いた。
あの黒（あか）いのだ。




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戦場の霧が晴れる。
灰狼は首を巡らせ、まだ動いている獲物を探し求めた。
その視線が、黒い悪魔のようなWHのそれと交わる。

硬直。長い静止。

黒いWHが動きかけた瞬間、不意に灰狼は踵を返し、脱兎の如く走り去っていった。


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何故だろう。
まだ動いてるモノはそこらじゅうにあったのに。
逃げ出してきてしまった。
あの黒（あか）いのの前では、あれらを爪にかけてはいけない気がした。
そもそもあの黒（あか）いのは、何だった？
あんなに硬そうなのに、どうしてか酷く柔らかい気がする。
少し力を込めれば潰れてしまいそうな。
それなのに、あいつはいつも硬くて熱くて痛いのがいくつも飛んでくる場所に行ってしまう。
あんな細い胴や小さい頭なんか、すぐに細切れになってしまう。
嫌だ。
何でだ？
いつもって、いつのことだ？
あの、赤くて、柔らかくて、あたたかいのを、どこで知った？

頭が痛い。

すん、と鼻が鳴ったとき、匂いがしてきた。
燃焼する匂い。
擦れる匂い。
僅かに遅れて、耳が音を捉える。
獲物の群れだ。
ああ、あの子の匂いも来る。
じゃあ、行かなくちゃ。