ENo.0060　Lupth

出撃目前まで迫ったある日。
通常通り作業が進んでいれば静かなものなのだが本日一人と一匹は慌ただしくしていた。


「ぎゃんぎゃん！」

「そう怒るな。足元に纏わりつくな、危ないだろう！」


珍しく彼女が声を大きくして何事か訴えながら纏わりつく犬を叱りつけたが怯む様子はなく唸る。
だが危ないとは自身でも思っていたのか足元に纏わりつくのだけはやめた。


「悪かったとは思ってる。予定通りなら今日はお前の相手をしている日だったのも忘れてはいない」

「きゃぅん！」


彼女が大股で歩きその後ろを犬が追いかける。


「直前だが色々変えることになってしまったと何度も説明しただろう、わかってくれ」

「ひゅぅん……」


自身のハイドラの内部へ潜り込んでいく彼女を見送り、犬は明らかにしょげた様子で座り込んだ。




彼女は常に一緒にいる犬に大変甘い。
なので撃墜されたり酷く負傷することがなければ、後日埋め合わせをすることだろう。

1LDKの居住空間と簡易ガレージを内包した移動型拠点。
少々角ばったドーム型をしている。



全ての窓や出入り口には過剰なロックが施されているようだ。