ENo.0049　ソネル

つまり、こうだ。


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気づくべきだった。少しはよく考えるべきだった。
本当に俺は何も考えてなかったってことだ。
ガブリエラのことを。
今も本人は飯をくったり、またシャワーを浴びたりしてるんだろう。
どっちも元からよく関わってたが、肉体を意識しやすいからってことかもしれねぇ。
肉体がないということがあいつという存在にとってクリティカルな問題だったことはわかりきってたし、
だから、わけがわからなかろーが、あいつ自身がキャッキャしてるようにそれ自体は喜ばしいこったろう。
だが──俺はいつのまにあいつを女だと認識するようになっていたんだ？
それを何故気づけなかった？
いや、違うだろ。なんで今さら夢を見るようになったのか、なんでわからなかったんだ。
無意識には気づいてたんじゃねーかよ。あの夢じゃ声だけが聞こえてたんだ。
それがガブリエラじゃないことを、何を話したのかを、俺はわかってたはずだ。

声。

ガブリエラは自分が何かということを探そうとしていた。
元々そのマスコットネームを使っていたライダーは、篠崎だったか、女性だと聞いたような気はするが、
とはいえそいつは死んでいたし、そいつがガブリエラにとって何かということはよく分からない。
あるいは戦場でのあいつは、およそレーダーだったわけだが、
そうして戦場に在る自分のことをあいつ自身がどう捉えていたのか、細かいことは知らない。
ライセンスがあるからつながりのできた同業者たちとはそれなりに連絡を取り合っていたようだが、
いちいち中身まで俺は詮索しちゃいない。
だが、わかってるべきだった。声のことは。
あいつは最初に「私はここにいる」と言ったんだから。
そしてその声を聞いたのは俺なんだから。
あいつがこの部屋でとった行動が、誰かから言われた言葉が、戦場で飛び交ったものが、
確たるものも在ることも無いあいつに、あいつ自身が何かということを教えていったとして、
ガブリエラ・ストークスという名前が何かの残滓だったとして
『声』を聞いたのは俺だ。
俺だけだったんだ。
それをちゃんとわかってりゃぁ、あいつにあんな不用意に話をしなかった、イメージを浮かべなかっただろうに。
断片。記憶の断片。
あいつが一度消えて戻ってきた時、あいつは遺跡の声を聞いたと言っていた。
神話の断片。同時多発的にそれらを手に入れた奴らは確かに戦場を変えていた。
だがそんなのよりとっくの前に、俺は声を聞いてたんだ。
原理がどうとか、いまさら考えてしゃーねーことはわかってる。
だからせめて気づいてるはずだった事ぐれーは……ぐれぇは、どうなんだ？
全部意識してりゃ、どうできたってんだ。
……まぁ、そういうところまで気づいて話せてりゃ、あいつ自身になにかを決めさせることもできたんじゃねーか。
そう思ってる、ってぇこったーな。
だから、ああ、こんな不様な羽目になっちまった事を後悔してる。


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彼女の前に戻ることに対してソネルには非常に強い抵抗感があったが、しかしいつまでも外で頭を抱えているわけにもいかなかった。
戦場の弾丸と同じだ。
向かい合うことを回避し続けることはできない。
カフィネ・オレイラウ。
かつて居た女ライダーと同じ姿のガブリエラ。
残像が追いついていた。