ENo.0321　“ウィナー”・ザ・ビート

［Reverberation-12］

　──…活動予定時間外の覚醒を確認。……ノイズの顕在化に伴う動作不良と認識。

『ノイズ扱いとは、相変わらずつれないもんだ。
　それはそうと、どうやらマテリアルベルトが攻撃を受けたようだな。奴らの計画に影響がなきゃいいが』

　──…実体さえもない亡霊である貴様が、なぜ外界の情報を把握している？

『そりゃウォーハイドラに乗ってりゃ、通信機能くらいは一通り揃ってるからなあ。
　機密事項までは探れないにしろ、公に発表されてるニュースくらいはチェックするさ』

　──そういう話をしているのではない──なぜ、貴様がそうまで自由に活動できるのかを訊いている。
　──この肉体は、すでにハイドラの「部品」でしかないとはいえ、私という自我の支配下にあるはずだ。なぜ肉体もない貴様が──

『──夢、って見たことあるか？
　ああ、もちろん「その姿になってから」の話だぜ。半ば人工知能、制御装置と同化した環境で、お前は夢を見れてるか？』

　──…何を……何が言いたい。

『五体満足だった頃とはもちろん違うだろうが、お前だって今もまだ「眠り」はするよな？
　省電力モードみたいな状態とはいえ、意識を手放して休息するタイミングってのはあるはずだ』

　──……ま、さか……

『もちろん、やれることなんて限られてはいるがね？
　さっきの話、外界の情報を集めたり状況確認をしたりするくらいは、今の俺でも問題なくできる』

　──馬鹿な……そんな馬鹿な！　貴様がこの肉体の主導権を握れないよう、厳重に対ノイズ用のプロテクトをかけたはず……！

『そうなのか？　そりゃ「やり方」が悪いんだろうなあ……
　外部からの干渉を防ぐ攻性防壁をベースにした防護処理じゃあ、俺を止められるわけないだろ？　俺は“お前”の中にいるんだから』

　──そんな──馬鹿、な……

『ま、あまり虐めても可哀想だからこれくらいにしとくか。ハハ。
　いよいよ［セクション・４］の攻略だろ？　霊障実験機がずいぶん多く待ち構えてる、迂闊に流れ弾を食らうなよ』

　──…ッ、消えろ！　今すぐ、私の中から──消えてしまえッッッ───！！！

『ハハ。ずいぶん嫌われたもんだ──
　ま、安心しろよ。俺は“お前”なんだからな……
　お前の《使命》の、邪魔をするつもりはないさ』

　──ッッ………！






［Correspondence-12］XXXX-XX-XX

　──…厨房より料理長へ。応答せよ。

　──…厨房より料理長へ。なぜ回線は繋がっているのに応答しない？　問題が発生しているのか？

　──…応答せよ。応答せよ。…………

『切り札は常にただひとつ』