ENo.0440　ヴィラカティ

いつも小さな町のように賑わう格納庫から人気の無くなる時間。
眠るハイドラの隣でパイロット・ランプが点滅している。

「どうしたの」
「何を戸惑っているの」

困惑したようなデバステイター・センチネルの声を聞きながら
ヴィラカティは送話器に語りかけていた。

「ねぇ　デバステイター
　聞こえてる………」


『何が貴様たちを突き動かしているのだ。平穏な日々を捨てて、なぜ戦う？』


電波送信のボタンを押したまま、ヴィラカティは問いへの答えを捜していた。
ヴィラカティは、答えを知っているはずだった。

「あなたたちは何を護っているの」
「わたしたちと戦いながら」

戦場で息を殺しながら、頭の中で何度も繰り返すうち
センチネルの声は自問自答へと変わっていく。

ヴィラカティは、答えを知っているはずだった。
それは父も同じだと思っていた。


『何が貴様たちを突き動かしているのだ。平穏な日々を捨てて、なぜ戦う？』



ヴィラカティは、記憶にとどめ続けていた。



「……この霧が森を覆いつくす火になった時
　世界は決して　良い方向には向かわなかった」

『世界が揺らいでいる……貴様たちは、なぜあがく？　なぜ、破滅へと向かう？』

「わたしたちは森を出なくてはならなかった
　鉄のために多くの精霊たちが灰になったわ」

『私は世界を救命する。貴様たちは護られていればいい。ただそれだけなのに』

『何が貴様たちを突き動かしているのだ。』

「家を燃やされ　土を汚され　わたしたちは故郷を失った」

『平穏な日々を捨てて、』

「でもね　デバステイター」


『なぜ戦う？』


「わたしたちはマキナ・エルフ」

「わたしたちから森を奪った機械を手に取り　戦うことを選んだ精霊たち」

「そして今は　わたしたちの選択が誤りではなかったと
　誇りのために進み続ける」

「相手が誰であろうと」

奔放であった父も、奔放であった自身も
金と名声を欲しながら、目を背けながら
結局のところ、抗うことはできなかった。

それは、郷愁だったのかもしれない。


「この先に続いているのが
　破滅だとしても………」


ランプの光は、いつの間にか消えていた。