ENo.0452　レイン・ロックサイド

　セクション5
再びセンチネル機との遭遇になる。
時折混線する通信より、センチネルのライダー（それがヒトなのかは怪しいところだが）にも同情を誘うような事情があるらしいことは分かる。
だが、ルート・ロックサイドが死んだように、戦場に出た以上は個人の事情などと言うものは何一つ勝敗に寄与しない。
私にとってもルートの仇は間違いなくセンチネル機なのだ、よって容赦なく撃ち落す。
一度目の遭遇でセンチネル機の特性は完全に把握させて貰った。
もはや敗北は有り得ない。

　コロッセオ・レギュレータ社とセンチネル機の通信は恐らく意図して我々ライダーに流しているものと推測される。
ハイドラ機同士の戦闘を見世物にしてきただけの企業だと思い込んでいたが、また随分と裏で暗躍していたようだ。
しかし、今まで暗躍していた彼らが、今我々ライダーに姿隠さず正体を曝け出そうとするその意図は何か。
一介のライダーにしか過ぎない私には想像の付かない何かの為だろう。
5年前の禁忌戦争においても、メルサリアやドゥルガーの部位はライダーを操り、己の望む結末へと導いた。

「掌で踊らされるのは性に合わないが…。」

…
……
………

…
……
………

　今日もまた何時もと同じ時間帯に着信が有った。
何処から通信をして来ているのかは探れなかったが、わざわざ毎日同じ時間帯に通信して来るのだ、会話する意図はあるのだろう。

　ピッ。

「次はミッションAだ。」

「…いや、コロッセオに行く。
　キミが誰だか知らないが、他人の指示を聞くのにも飽きてな。」

「コロッセオか…。」

「コロッセオへ行くと都合でも悪いのか？」

「コロッセオ・レギュレータ社は他の企業よりもセキュリティが高く、私が得られた情報が極端に少ない。」

「…そろそろキミのことを話してくれないか？
　ルート・ロックサイドの遺した通信機にもキミからの音声が残されていた。
　キミは一体何者だ？」

「大した者では無い。
　事実その遺跡についても白兎や教団、シルウェストリス、マテリアルベルト…コロッセオ・レギュレータなどとは比べるのもおこがましい程度の知識しか持っていない。
　ただ、遺跡を巡る争いの先に無意味な犠牲者が出るのを避けたいと願っている、それだけの者だ。」

「何故ライダーに指示を出す？
　キミの出す指示で何が変わると言うのだ？」

「私が大勢のライダーに通信をして指示を送っているように思っているようだが、それは誤解だな。
　私が通信をしている相手は、ごく少ないライダーだけだ。
　その少ないライダーに、貴方とルート・ロックサイドが入っていたのは偶然ではないが。」　

「どういうことだ？」

「…あの辺境の国に戦の種を撒きたくは無いと、そう願っている。」

「……！」

「ルート・ロックサイドが死んだ事実を前にすれば、戯言のような言葉だが。
　貴方達には出来得る限り安全な道を勧めていた心算だ。
　無論、慈善的な精神でそうしていた訳では無い。
　その結果として無駄な争いが回避できると信じたからだ。」

「……。」
　
「コロッセオの対戦相手は手強い。
　HCSを切るような真似はしない方が良いだろう。」

　その言葉を最後に通信は切られた。

アズエルド家

　残存領域辺境のとある王国に権力の地盤を有する貴族。
現当主は病に臥せ、次期当主とされるアロー・アズエルドが当主を代行中。

　政変前は王国内でも屈指の数の騎士を擁していたが、政変で多くの騎士を失い、王国内での発言力も大きく衰えた。
現国王に対して批判的な姿勢を取っており、領内及び王国内で活動する武装勢力「真実の声」を裏でバックアップしているとの噂も立っている。