ENo.0058　泥縄火擦

正念場はまだ終わっていない。
ここから、巨人の体内から、生きて帰らなければならない。

脱出経路を報せる通信が飛び交う。
──そしてデバステイター・センチネルの混信も。



そうか、と思った。
あの≪ΜΕΛΠΟΜΕΝΗ≫は、戦う者として戦うことさえ出来れば良かったのか。
使命として、自らの証立てとしての戦いこそが全てだったのか。
無垢な奴だ。

そうか、と思った。
あのような生き方は、私がかつて選ばなかった道だ。
生き延びるために捨てた未来だ。
私は誇りや沽券を犬に食わせ、戦いを日銭稼ぎの手段に堕とした傭兵だ。
企業お抱えのハイドラライダーとは、そういう存在だ。
だから、私は、あの≪ΜΕΛΠΟΜΕΝΗ≫に、言い知れぬ思いを、抱えていたのか。

ようやく合点がいった。
しかし、今更こんなことに思い至ってもどうしろと言うのか。



遺跡の端々が音を立てて崩れていく。
早いところ脱出しなければならないが、仕事がまだ残っている。
《グレムリン》の討伐。最後の鬼退治だ。
こんなところでいたずらに命を擲つつもりは毛頭ない。
けれども仕事とあらばもう少しだけ付き合ってやろう。
ハイドラライダーとは、そういう存在だ。

基本的に
なおしています