ENo.0060　Lupth

ドハマリした犬がしつこくねだるので、ここ暫く彼女は毎日のように犬のマッサージに励んでいた。
一人で黙々と紙を捲り続けるよりはよほど良いが、毎日はさすがに疲れる。主に酷使される生身の腕と背中が。


「狼、今日はこれで終わりにさせてくれ」

「あぅん！？」


シュバッと顔を向けて明らかに不満げな声を上げる犬に、彼女が困ったように笑う。苦笑の色も少し混じっているが、かわいいわがままを言う子供に向けるような温もりが強い笑みだ。


「わかった、わかった。なら寝る前にもう一度やるから今は勘弁してくれ。いい加減、腕と背中が辛い」

「……ひゃん」


少し悩んで承諾した犬にありがとうと言うと、大きく伸びをして立ち上がる。

このままでは体が固まってしまうと、彼女は柔軟運動を始める。特に予定には入れていなかったが体を解すには丁度いいだろうとトレーニングに励むつもりだ。
犬も近くに転がって体をくねらせている。一緒にトレーニングをする前の準備運動の真似事だろう。


仲良くトレーニングに励み夜には約束通りマッサージを施され、犬にとっては大満足な一日だっただろう。
翌朝、彼女は若干だが左腕が筋肉痛になっていた。

1LDKの居住空間と簡易ガレージを内包した移動型拠点。
少々角ばったドーム型をしている。



全ての窓や出入り口には過剰なロックが施されているようだ。