ENo.0292　ディーヴァ

静かだ。
そんな中を、あなたは歩く。
何も目印や、道しるべのようなものは無い。

それでも、確信だけはあるから、それに従うようにあなたは辿り着いた。



「あら」



機体胸部を解放したハイドラから少女が一人、身を起こしていた。
その装いだけは変わったものの、いつも通りの彼女のように見えた。


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トスカとの対決を終え、機体を大破させて戻ってきた晩。
トスカは最早、殺意の片鱗どころか、溢れんばかりの自信すら引っ込めて、悲しそうにディーヴァをあなたに預けて、そのままどこかへと去ってしまった。
ハイドラの酷い損傷に肝を冷やしたものの、彼女たちはどちらも無傷･･･に、見えた。

しかし。

戻ってきた彼女は、触覚をほぼ失っていた。



「トスカ　は　女優であった　彼女　が　演じていた　姿　に　過ぎません」

「彼女は　きっと　何もかも　かき回した　末　私に　奪ってしまった　『もの』　を　すべて　返そうと　したのだと」

「･･･ふふ　すいません　もう少し　強く　抱きしめて　下さいますか？」

「ええ　こんなのは　彼女の　命と　覚悟に　比べれば　安い　買い物ですから」

「ええと　あの　なぜ　あなたは」



「あなたは　そんなにも――――――」



--------♪


「あの時」

「あの時　私を　ちゃんと　行かせてくれて　ありがとうございます」

「おかげで　ちゃんと　向かい合えました」

「私の　考えが　違って　本当に　トスカが　私を　殺そうと　しているだけなら　私が　死んでいた　でしょうが」

「･･･　覚えて　いますか？　パンツァークリンゲの　話」



･･･

⇒パンツァークリンゲの話をする



「ええ　いろんな　形や　思いが　込められた　剣　　彼女のそれは　確かに　何かを　守り通そうとする　剣だった　ので　･･･」

「えへ　見惚れて　ハイドラは　ズタボロに　しちゃいました　けどね」



照れたように彼女は笑った。
あなたと彼女の間に、乾いた風が吹き込む。
乗降モードで操縦棺を開いている彼女が、逆光になってあなたの目に飛び込んでくる。

「さて　それでは」

「歌を　どうぞ　聞いていってくださいな」



そして、歌が始まった。

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様々な思惑があった。
その中に生きた、一人の少女がいた。
彼女は、色々な喪失を繰り返す。
しかし、彼女はそれを不幸せに思う事は無かった。
それは、悲しく思う機能さえも失った、･･･からでは、今はない。
その隣に、確かに、彼女に寄り添ってくれた誰かが、居るのだから。
まだ、その温かさを感じられるから。

たとえこの先、彼女がぬくもりを感じる機能さえ失ったとしても。
彼女は、それでも幸せであり続けるだろう。

そう、信じていられた。






ドキドキ☆霧戦争　　　ディーヴァルート　通常エンド

「（ディーヴァ自身の歌だろうか・・・？聞き覚えのある声が流れている。今日はそういえば、彼女の姿を見ていない）」
（射撃５　素材＋１）


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緩い空調にむき出しのコンクリートと配線。

人間用の火器練習用の的がやや離れた場所に見える。

人数分のイスが用意され、それ以外は壁際に積まれている。

軋む扉を二枚抜ければ、ただ広い荒野と、いくつか点在したジャンクで出来た的。

戦場のジャンクが一時的に集められる場所のすぐ近く。練習にそれらを吹き飛ばせば、幾らか使えるものくらいは見つかるだろう。

終わりをそろそろ見据えて、重みのある空気を誰もが感じる。
だが、手も足も止めてはならない。
そうすれば、ジャンクとして転がるのは、自分たちかもしれないのだ。
感傷も、思い出も、痛みも、金も、生者にしか使い道は無い。