ENo.0236　クラリア・フォレット／【ライダー】

「うん、これで良し、と。
後は細かな調整をして君に合わせるだけね」

手に持ったタブレットを叩き、大きく上を見上げる。
硬く厳かな体。雄々しく悠然とした佇まい。
そこには誰もが恐れ、あるいは憧れ、あるいは見惚れる。
鉄の巨人――ハイドラが格納されていた。


クラリアの仕事はハイドラを駆るライダーのオペレーター。
つまり戦況の通達、敵機体の把握、逃走ルートの確保などが主な仕事だ。
今は専属のオペレーターとして働いているが、元はとある企業のオペレーターを務めていた。
しかしハイドラが手に入る機会を得ると、退社。
そしてハイドラのパイロットを見つけ、専属となることで再び働きだした。

「それで、【ライダー】さんはどうやって戦っていくつもりかしら？
残像領域での戦いは初めてなんでしょ？」

独り言のように話しているが、その声はヘッドセットからハイドラの操縦棺へと音声が流れている。
その中には、【ライダー】と呼ばれたハイドラを駆る人物が搭乗している。
クラリアの言葉に戸惑い、あるいは長考しているのか、返事は返ってこない。
ふぅ、とため息をついて苦笑するクラリア。

「残念だけど、私もここの戦いは初めてよ？
情報は仕入れてるけど、実際はどうかなんてわからないわ。
だから、結局最後はあなたが決めるの。
――もし私が選ぶとするなら、近距離戦闘をメインとする機動型にするけれど。
これだけ深い霧だもの。
狩るときも撤退するときも、速いほうが便利だと思うわ。何かとね。」

そのアドバイスを聞いてか。
クラリアが持っていたタブレットがピコンと音を鳴らす。
それは【ライダー】が方針を決めた声。
タブレットには武装、パーツの種類がいくつも並んでいる。
が、それらは全て――。

「そう、その方針で行くのね。
ならそうしましょ。
頑張って稼いで、早くご希望通りの機体を組み立てたいわね」

笑顔で話しかける。

タブレットにはすべて、軽量型のパーツや武装が並んでいた。