ENo.0107　戦闘人形『カラミティ』

～幕間～



「寒っ！！！！！」

当然といえば当然だった
人形だった我は、生活用品を殆ど必要としなかった
部屋にあるのは、通信端末と、人形用充電ポッドのみ
暖房器具も、睡眠危惧も、何一つ用意していない

故に――



我が部屋は、極寒地獄だった








「――というわけでノエル、貴様の元に来たということだ
ついでにパンも持ってきた」

「それくらい予測しておきなさいな、だからポンコツと言われるのですよ？」

主にそれを言っているのは貴様ではないか、とは言わないでおいた
事実、予測していなかったし、言われても仕方ない

此処はノエルの部屋だ、以外と片付いている……
有線回路で散らかっていると思っていたが

「まぁまぁとりあえずこれでもどうぞ」

「なんだこれは」

「褞袍」

「読めぬ」

「どてらですよ、まぁ綿の入った上着ですね」

そう言って我に着せようとしてくる
此処に腕を通せばいいのか？

「はいよくできました～、介護が必要なんてかわいらしいですねぇ」

「仕方ないだろう、人間としての履歴がまだ――
あぁ暖かい……」

「はいはい、では此方をどうぞー？」

「……なんだこれは」

「『炬燵で蜜柑』一丁になっております」

「こたつ、で、みかん？」

「まぁまぁとりあえず入ってみたらどうです？」

「貴様に倣ってやってみるか――おあぁぁぁ……なんだこれは」

「はい蜜柑、皮は向いておきましたからね
どうせ剥き方知らないでしょうし」

「あとで教えてくれ……ん、美味しい……」

「あらあら、何時もの威勢はどこへやら……」



人間の文化、案外悪くないかもしれん








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凍てついた戦場で、我々の部隊は霜の巨人と対峙していた



巨人がカルマを大量に振りまく

味方陣営に攻撃が降り注ぎ、端から壊滅に追いやられていく

ノエルは、最前線に居た、敵の攻撃を、受け止めていた

最後の一撃がノエルの機体に当たった時、彼女は、彼女の機体は――





「ノエルッ！？――あ――」

目を覚ますと、薄暗いノエルの部屋だった
ノエルは、我の近くで就寝していたようだったが、今ので起こしてしまったらしい



今の光景は、夢――なのか？



「んぅ……煩いですわねぇ、もう……私に用事でも？」

「――悪い夢を見たのかもしれぬ」

「……」

多分夢なのだろう、しかし過去の追憶ではない
それはもしかしたら、あり得たかもしれない未来、不確定な未来かもしれない
だが、脳裡に視えたその光景が、我が心に不安を齎す

「ノエル」

「ええ、はい」

此奴がいとも容易く墜ちるとは思わないが
それでも――

「――死ぬなよ、ノエル」

「……貴方がもうちょっと無茶をしなければ、生き残れるとおもいますよ？」





何故、我はノエルを失うことにこんなにも怯えているのだろうか

しかし、我がそんな未来を望んでいないことは確かだ



あの景色が、この先に視えた未来だというのならば

この手でその運命を変えてみせる



――安心しろ、貴様は我が、護る

闘争の度、我は此処に訪れた――

此処は107号室、我が陣地。
我の回復から昇華まで、全てを見届けた部屋だ。