ENo.0277　カラーガタ

ハックテックにエンジンを依頼することにした。
そして僚機申請も、引き続き。

そして、ラピュリメント・バーキュラが売りにかけていた潜航技術のかかったエンジンを買ってそれを素材にして欲しいと頼んだ。

ハックテックにも次元渡航の技術を持っておいて貰いたいと思ったからだ。
ラピュリメントが、アルファ8の彼女と僚機で居たのはログでチェックしている。
彼女を見つけ出せれば次元の向こうのことももっとハッキリする筈だし、万一ラピュリメントにも協力が得られるならきっともっとハックテックで次元潜航と、載せるのが種子にしろ人にしろ、うまく運んでくれるだろう。

「ハイドラ大隊の諸兄」がどう考えるかはなんとなくは判ったような気がした。
自分たちの世界を守るために敵を殺す。
メルサリアもヒルコもルオシュも多分そういうことなのだろう。
保全は理解出来る。だが、何故この次元のこの世界でなければならないのかは未だにわからなかったし、本当に殺しているのが「敵」なのかの裏どりすら誰もしていないのではないか。

そもそも。死を拒んで不死を買ってどうするのだろう？

そして、これから産まれて来る「種」を眠らせたままにしておく、ということは。
今のこの世界のために次の世界を堕胎しようとしている、ということではないだろうか。

自分たちの世界を守るというなら、せめてそのいのちの芽吹く場所を探したいと思うのは私だけなのだろうか。
諦める気持ちに整えるには手を尽くすことが必要だ。少なくとも私には。
死なずの老兵も去りはする。そうして場を譲っていく。
ゆずりゆずりて楪の。

この世界しかない、と思い込んでいるのは誰なんだろう。
だから私はメルサリアに話を聞きたいと、思っている。
ヒルコにうまくはなくとも伝えたいことがある。

この世界を「種子」に譲るか「種子」が他に産まれられる場所探すか。

それにはガブリエラ・ストークスを探し出してハックテックに合流してもらい、潜航艇、種子達を送れるものを作り、私が先遣隊となって残像領域の生物が棲める場所を確保するのが筋だ。

手段もないのに掲げる理想は狂人の戯言だから。

縁を結って行かねば因が足りても果は得られない。

時間進行は私の行動を許容するだろうか。間に合うだろうか。

そして私は、この世界に関われるのだろうか。

時間と一体だった青年は、死を確定され生まれ落ちることに恐怖して蹲るだけの少女に変ってしまった。

弱く弱く、ただ弱い。

恐れを知って見つめるモノから殺すものに変質した。

それは生の本質。
死ぬという必定が生であり、死ぬことの原因は生まれたことに他ならない。

死なないために殺す。

無自覚に喰らう塞がれた目は開き、その目が捉えたモノを殺して食べる。
それは生物としての個の確立であり。

アートマンの細胞としての霊格の確立だ。

死出の径は、大丈夫、誰もが往くのだ。

誰や先我や先と旋律は歌うだろう。