ENo.0219　アクロ

いやー参ったぜ、契約先のビルが吹っ飛んじまったもんな。給料ちゃんと振り込まれるかな？

うん、企業自体は大丈夫だろ。
数年前に起きた終わりの冬に比べたら、社ビル爆発の一つや二つで傾く様な連中じゃねえよ。
あの頃から変な終末思想が流行っているんだよな。ヒルコ教団以外にも。
こないだは「世界が水底に沈む」とか何とか言ってたし、肺に霧でも溜まってんじゃねーか？
どんだけ雨が降り続けば水で溺れるんだよ、この町は。それが世界全体？　無いわ。
まぁ、今は目の前の遺跡攻略に集中しようぜ。センチネルも目撃されてるそうだしな。

――――。

シルウェストリスのオペレーター担当からの連絡は、先週の本社襲撃から途絶えている。
さっき BoilingHeart に食わせたデータは、おそらく同業者にも渡っているのだろう。
ただし、ハイドラ乗りだけに。
じめじめと冷めていくこの世界で、ハイドラだけが破壊と再生に耐えられるとは聞くが。
あのセンチネルは、ハイドラ隊こそが脅威と見なし始めている。
もしかしたら、企業の思惑とは別の、俺たち自身があの遺跡で何かを見つけるかもしれない。

雑居ビル地下のゲーセンでは、今日もキッズたちが剥きたての角を突き合わせている。