ENo.0198　フィガロ・ピースレイ

通信を受け取り、モスキートを待ち構える。
出てきたのはエマではなく、1人の女性。
「――貴方は？」
「フィガロ・ピースレイ。……エマニュエル・スミスの同じチームを組んでいる」
ようこそお嬢様。そう告げると、彼女は滅茶苦茶に嫌そうな顔をした。
彼女から現状を聞き、どうにも厄介な事になっていることを理解する。
エマ自身の事もそうだが、それ以上に攫った犯人だ。
フィガロはくるりと思考を回すが、随分と自分が逆に落ち着いている事に気が付く。
随分と霧にもまれたものだ、と一人こっそり溜息を吐いた。
「あっちはそれどころじゃないでしょうね」
「だろうな。支援を戦場に用意しておく。……まだ、ミッションは終わっていないからな」
日本の定型文だったか、『帰るまでが遠足です』だなんて。まったくその通りである。
何はともあれ彼女はマノ社にいれば身の安全は確保されるだろう。後は迷子の回収だ。
勿論、その後に大元とカチあう可能性があるかもしれないが――

一つ大きな問題があるとすれば、『エイレンスキナアハ』にハッキング攻撃を仕掛けられているという事か。

『ファイアウォールオールグリーン。マノ社ネットワークを遮断。当ハイドラは通常運転を可能としています』

フィガロが呼びかければ、K.Tがアナウンスをする。
今週の戦闘に此方の行動に問題は無い。エマを助けて戻る。それだけだ。
力の限り生きてやる、なんて言葉がふわりとフィガロの脳裏に浮かんだ。彼は今そうしているのだろうか。
それとも。
「……俺は俺の出来る事をやらないと」

呟いて。ファレン・マックルランと名乗った少女と共に歩く。

「なんかハッキングみたいなのが来てて……誰か不正アクセスでもしました？あんまり害意なさそうだからいま頑張って対処してるんですけど」

ノイズとエラーメッセージの入り交ざった画面の中の宿禰がウイルス？型の敵と戦っているような映像が流れる（見た目より余裕そうであるが）

「ちょっと～！えびっこちゃん挟まないで～～～～」

画面はバグバグ、端末はえびっこちゃんに挟まれて大変そうである。

「あ、大事そうな話はそっちの小型の端末の方からするので……」

と小型端末の方の「すくねくん」を指さした。