ENo.0022　アグロヴァル・エッフェンベルグ

「……っ！！」

カレンさんに提出する書類を整理しながら通信を聞いていた。
そして、ふいにその声を聞いた時、思わず通信機を凝視してしまった。
ばらばらと書類が床に落ちていく音が聞こえるが、そんな物は二の次だ。

「っば……バルーナスか？！ 今の！特徴的な溜息の吐き方！！それに蒸気アイマスクってお前……！！」

ガタガタと通信機を揺さぶりながらも、意識していない内に口が弧を描き始める。
嗚呼、嗚呼、そうだ。 その声を久々に聞いた気がする。 何だか5年前を思い出して、酷く懐かしい気持ちになる。

「大隊の前で弱音を吐くなって……そっちがソレを言うのかよ……」

ふいに彼が組織に裏切られ、孤立してもなお戦いに赴いた時の言葉が脳裏を過る。
報酬も約束できない、とか。 ほんの少し自信のなさそうだったあの言葉もまた、弱音とも取れるだろう。
いや……あの時の経験があったからこそ、そう言えるのかも知れないけれども。

嗚呼、とにかく元気そうで安心した。
遺跡……ドゥルガーの方にかかりっきりになっている間、街の方は確認しようにも出来ない状況だったから。
彼が元気ならば、きっとルオシュ達も元気だろうか。 この大戦が終わったら、店を訪れるのも良いかも知れない。

……知っている声が聞けて勝手にホッとしたのも束の間。
そこそこ大きな物音を立ててしまったので、2階で寝ている二人を起こしてしまった事に気付く。
廊下を歩いて此方に向かって来ている音が聞こえてきている。

あの子の了承も得た事だし……そろそろ二人に今回の事を話す、良い機会かも知れない。
どちらにせよ、こんな騒ぎを起こしてしまったのだから話すしかない、と言うのもあるけれど。
ばらけた書類をのんびり拾いながら、そんな事を考えていた。


……そう言えば、あの子の名前を本人から直接聞いただろうか？
出来れば仲間として『こちら側』に引き込んでしまいたいとは思うけれど、それは本人の意思に任せるとして。
やはり知り合いならば名前を知っておいた方が意思の伝達がスムーズに済むのではないか……？
とは言え、外見的特徴などをカナエ君に聞いて名前を知るのも少し狡い気がする。
彼女の事はそう言った前置きをした後に話した方がいいな、と思いつつ、ティーポットに三人分の茶葉を放り入れた。

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【今回の献立】
柔らか牛タンと野菜たっぷりのビーフシチュー、焼きたてパンを一籠、アップルシナモンパイ

【追加品】
戦闘待機中に手軽に食事を摂れるように、パンと一緒に持ち歩けるよう保温水筒にコンソメスープも入れておこう。
本当なら食事は落ち着いた場所で取る事が望ましいけれど、戦場によってはそうもいかない可能性を考慮。

正式名称は『フラーレス(F) ワールド(W) アドベンチャラー(A)』である。
『フラーレス世界旅団』と言う別称もあるが、特にどっちで呼べと言う事はない模様。

とある世界にて、世界間の移動を自由に行う方法を確立させた人物が、
己の探求心・知識欲を満たす為に作りだした個人的秘密組織。
構成員は設立者を含め5人ほどと規模は小さいが、あくまで趣味の範囲なのでその程度で良いらしい。

組織の正式な構成員には、設立者の部下として様々な世界の調査を命じられる……と言うと堅苦しいが、
特に調査の期日等は存在せず、自由に旅して良い位の緩さである。
調査する手が足りないと言うのであれば、派遣された構成員が現地で手伝ってくれる者をバイト感覚で雇う事も認められている。

定期的、不定期に関わらず専用の端末でデータ送信をすればある程度の収入が約束され、
活動拠点としてどんな世界からでもアクセス可能な部屋を支給される。 ホワイトだね！(？)

余談ではあるが、
『組織名？ 万が一所属を聞かれた時名乗るのに必要だから作っただけで、通称は略称で文字数少ない方にしただけよ』
とは設立者の弁。

今回の戦場でも面白そうな事になる気配がした為、バイト感覚で来てくれた人に対しても可能な限りのバックアップを約束している。
具体的に言うと、この残像領域の調査時には多少広い程度の居住空間と、不自由ない程度の食糧(主に食材)が提供される。
……料理が出来ない人はどうするか？ 支部長(仮)のアグリオ(22)にでもたかりに行くと良いよ！！