ENo.0390　ピクセラ

「…………。少し、考えさせてくれ」

そう言って会話を打ち切られてから何日経ったか……なんていちいち数えちゃいないけど。
とにかくあれ以来、タッドくんとはまだ会話をしていなかった。

元々ボクたちはプライベートで仲良くしてたわけじゃないから、別に避けてるわけでも避けられてるわけでもないと思うけど。
出撃の前後しか顔を合わせないことなんて、前からよくあったし。

だから今も、いつも通りと言えばいつも通りなんだけど、あんな風に、会話を打ち切って、いつも通りなわけあるか！

「全然少しじゃないじゃん……。あ～～～思い出したらまたムカついてきた」

ボクがタッドくんのせいで悩まされているということがまたムカつくし、そもそも『僚機じゃん』なんてセリフが自分の口から出てきたことにもイライラする。
というか、恥ずかしい。自分に酔ってたとしか思えない。

多分、ボクは友達がほしかったんだ。
ずっと、そう言える相手がいなかったから。
どうでもいい話をしたり、悩みごとを相談したり、一緒に何かをがんばったり。そういう相手。

僚機なんて、ただ戦場で一緒に戦うってだけの、タブレットの操作一つで解消できる僚機という関係なのにね。

ボクたちは友達じゃない。
戦友とも呼べないと思う。
相棒なんて、なおさらだ。

ボクとタッドくんは見ているものも、やりたいことも全然違う。
だから、ボクはボクのやらなくちゃいけないことだけを考えないと。
ボクが考えないといけないのは、死なないことと、お金を溜めて借金を返すこと。
タッドくんの事情に首を突っ込むことじゃない。

だから、もう考え事はこれで終わり！
というか、一人で考えててもどうしようもないし。

アセンブルでも考えるか、街に出て小銭稼ぎでもしてくる方がよっぽどマシだ。

禁忌戦争から五年。
世界は霧の呪縛から解放され、新たに黄金の楔を撃たれていた。

持つ者は持たざる者を貪り食い、世界は荒廃していた。
だがーー人々の愛する""正義""は、失われていなかった！！