ENo.0390　ピクセラ

昔から、誰かが死んで嬉しいと思ったことがない。

そりゃあ、めちゃくちゃ嫌な奴が死んだって聞いたらスカッとするし、死んで当然だって思うけど。
――でも、それじゃあ僕は？
生きているのが当然だって言えるのか。
そんな上等な人間なんだろうか。
死んだのがいいやつだったなら、なおさらだ。

次は僕かもしれない。次は大丈夫でも、その次は。

誰かが死ぬと、そうやって嫌でも"死"について考えてしまう。
人の死を笑うには、路地裏の生活はそれが身近すぎた。

今だって、それは変わらない。
ハイドラの生存優先システムがバグれば、僕はきっとあっさり死んでしまう。
そうでなくても、僕の命を握っている金持ち連中の気が変われば、戦場に出るまでもなくこの身体は臓器とその他の残りカスに分けられるんだろう。

怖い。怖い。怖い。死ぬのは嫌だ。

いつか理不尽に奪われてしまうかもしれない命なら、せめて面白いことだけを考えていたいのに。
（傍から見れば無駄にしか思えないだろうことを僕がやっているのは、そういうわけだ）
誰かが死ねば、自分にとってもそれは他人事じゃないんだと思い知らされてしまう。

だから、誰かが死んで嬉しいなんて思えないんだ。

禁忌戦争から五年。
世界は霧の呪縛から解放され、新たに黄金の楔を撃たれていた。

持つ者は持たざる者を貪り食い、世界は荒廃していた。
だがーー人々の愛する""正義""は、失われていなかった！！